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過去の遺作置き場
2024年03月19日 (Tue)
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2007年08月18日 (Sat)
昼休み―――。
いつもならお昼のお弁当合戦で騒がしい女の子達は、今俺の周りには居ない。
何故かって?
そりゃ勿論、逃げてきたからに決まっている。

…最初のうちは結構嬉しかったんだけどな。
流石にこう毎日毎日だと偶には解放されたいと思うのも仕方ないだろ?

ただでさえ栞の重箱弁当だけで相当な量を食う羽目になるのに、更に他の皆までお弁当作ってきて俺に食べさせようとするからなあ…。
いくら毎朝(寝坊助の名雪のせいで)遅刻寸前で全力疾走しているとは言え、こんなに毎日毎日トンデモない量の昼飯を食わされたらカロリーの消費が追いつかない。
最近顔の輪郭がぷっくりしてきたような気がするし、心なしかズボンがきついような…。
もしかしたら、その内俺はフォアグラになってしまうんじゃないだろうか。

と言うわけで今日は4時限目の授業が終わるや否や、ダッシュで教室から逃げてきた次第だ。
正直後が怖い気もするが…余り気にしないでおこう。

俺は、昇降口の屋根の上に昇るとゴロンとその場に寝転がった。
ここなら屋上まで探しに来られても、すぐには見つからないだろうしな。

ぼーっと、何とはなしに空を眺める。
真っ青な空が一面に広がり、何とも心地良い。

………良い天気だなあ。
それに屋上には滅多に人が来ないから凄く静かだし。
いつもならこんなに落ち着いてのんびりと昼休みを過ごせないからな。
ま、せっかくだから久しぶりにゆっくりさせてもらうか。

そう思って俺はゆっくりと瞼を閉じた。





「あら、相沢君ここに居たのね」

突然上から聞こえてきた声に目を覚ますと、そこには香里の姿が。
両手を腰に当てて俺の脇に立って見下ろしている。
どうやら俺を探してたみたいだな。

「香里か……」
「どこへ行ったのかと思ったら…皆、探していたわよ?」

呆れながらそう言う香里。
どうやら当たり前の事だが、皆逃げた俺を探しているみたいだな。
そしてそれは、目の前の香里も例外じゃないんだろう。

「栞が嘆いていたわよ? 今日のお弁当は自信作なのに~って」
「あのな、香里…自信作は良いんだが、少しは栞に量を自重するように言ってくれ」
「それは無理ね」
「即答?!」
「ええ、だって既に何度も言ってるもの」
「ガクっ、そう言うことか」

俺はがっくりと肩を落とした。
どうやら栞は香里がいくら言ったところであの量を減らす気はないらしい。
寧ろ最近は更に量が増えている気さえする。
…いずれ栞の弁当で殺人事件が起きるかも知れないな。
勿論、死ぬのは俺なわけだが。

…しかし毎日あんな量の弁当作っている栞の家は大丈夫なんだろうか。
俺のために作っている弁当のせいで、家計が火の車とかだったりしたら洒落にならんぞ。

………あんまり考えるのはよそう。


「さ、そんな事よりも早く皆のところへ戻りましょ、そうしないとまた……」
「まあまあ、偶には良いじゃないか。
 こうやって香里も俺みたいに寝転んでみろよ、気持ち良いぞ」
「…遠慮しておくわ、制服が汚れるもの。
 それよりも本当に皆のところに戻らなくて良いの?」
「良いんだよ、偶には一人にさせてくれたって良いだろ」
「あたしは構わないけど…後でどうなるか知らないわよ」
「う……今は忘れさせてくれ、頼むから」
「ふふ…まあ良いけどね」

そう言って、微笑みながら香里は寝転んでいる俺の隣に腰を降ろす。
風に軽くたなびく髪を片手で押さえながら、俺と同じように空を見上げた。

「良い天気ね…」
「それに静かだしな。……たまにはこう言うのも良いだろ?」
「ええ、そうね…」
「全く、いつも一緒に居るのが香里だけならこうやってのんびり落ち着けるのにな」
「え!?」

俺の何とはない言葉に、びっくりしてこっちを振り向く香里。
心なしか頬が少し紅い。

「相沢君…それって…」
「あ、いや! べ、別に深い意味はないぞ深い意味は」

頬を紅潮させた香里を目の前にして、俺は慌てたのか思わずどもってしまった。
別に本当に深い意味はなかったんだが…頬を赤らめている香里を見ていたら、何かこう胸の奥で甘酸っぱいものが…。

何となくそのまま黙って俺と香里は見つめ合ってしまう。
香里は頬を赤くしたまま、少し恥ずかしそうに身体をモジモジさせていた。
そんな香里を見て、俺は何故か肩を取って抱き寄せ―――


ビュオオオオオオオオッ!

と、そこへいきなり風が吹いた。
それもかなりの突風だ。

「うわっ」
「きゃっ」

思わず手を翳して風を遮る。
かなり強い風…例えるなら、漫画とかでいとも簡単にスカートが捲れ上がってしまいそうな突風と言おうか。
そうスカートが………。

「ふぅ、凄い風だったわね相沢君……相沢君?」

ぼーっと自分の方を眺めている俺を不審に思う香里。
俺はそんな香里から目が離せないでいた。

「相沢君? 何を見て…?!」

そう言って俺の視線を辿って行くと……漸く気付いたのか、ハッとして素早くスカートを押さえつけた。
つまり、今の突風で香里のスカートが少し捲れ上がっていたのだった。

「……相沢君、見たわね……?」
「え? ああいやいや見てないぞ、俺は何も見てない。 と言うか見えなかった」
「…………本当に?」
「ああ本当だ。 ピンクのフリルのついた可愛い下着なんて全然見えてないから安心して良いぞ」
「もう! やっぱり見たんじゃない!」

スカートを手で押さえたまま、香里は顔を真っ赤に紅潮させてこちらを睨んだ。
いかん、口が滑ってしまった。
しかしまあ一応不可抗力だったとは言え、まじまじと見惚れてしまったのは良くなかったな、反省。

「もう…相沢君のエッチ」
「ははは…いや、すまん」
「本当にそう思ってる?」
「おう、心の底から反省しているぞ」
「だったら…」

いきなりずずいと香里が身を乗り出して俺に顔を近付けてきた。
お互いの息がかかるぐらいの距離に香里の顔が……。
……香里ってうっすらとリップつけてるんだな……って何冷静に見てるんだ俺は。

「だ、だったら何だ?」
「下着を見たことを許してあげる代わりに…あたしのお願い一つ聞いてもらっても良いかしら」
「香里のお願い?」
「ええ。 あたし以前から試してみたいと思ってた事が一つあるのよ」

そう言って香里はフフフと笑った。
うーん…何をやらされるのか判らんが、まあ香里の事だからそんなに無茶なことはお願いしないだろう…多分。
そう願いたい。
まあどっちにしろ俺に拒否権はないので、例え無茶なことでも聞かざるを得ないのだが。

「よし判った、そのお願いとやらを聞いてやろうじゃないか。……それで何をするんだ?」
「ふふ、簡単なことよ。 あたしに膝枕させて欲しいの」
「ひ、ひざまくら?」

膝枕とは即ち正座した膝の上に頭を乗せて枕代わりにすることである…って説明しなくても知ってるか。
ってか、お願いが膝枕?

「……俺が香里に膝枕するのか?」
「そんなわけないでしょ! 『あたしが』『相沢君に』膝枕してあげるのよ」
「まあ当たり前か………って、本当に膝枕してくれるのか?」
「だからそう言ってるじゃない。
 それとも相沢君はあたしなんかに膝枕されるのは嫌かしら?」
「いやいやいや滅相もない、是非ともお願いしたいくらいでええそりゃもう。
 ……でもこれだと俺にとっては御褒美みたいになるんだが、
 本当に下着の代償がそれで良いのか?」
「良いのよ、あたしがやりたいんだから。ね?」

そう言って香里はウィンクした。
何か本当に良いのだろうかとも思いつつ、俺はそのまま香里の言葉に頷いて従う事にしたのだった。





「こんな感じかしらね」
「ああそうだな……香里、足痛くないか?」
「大丈夫よ、気にしないで」

ちょこんと正座した香里の膝の上に、俺は寝転んで頭を乗せている。
後頭部には香里の柔らかい太股の感触が感じられ、何とも心地良い気分だ。
しかし男の夢である膝枕を香里にしてもらってるなんて……ほんとに夢じゃないだろうな、これ。

……もしこんな所を誰かに見られたら恥ずかしいどころの話じゃ済まないが、何故か屋上には誰も人が来る気配がない。
まあ誰かが来ても昇降口の上だから、見られるような心配はないけども。

それにしても……。

「なあ香里」
「何かしら? 相沢君」
「どうしていきなり膝枕なんだ?」

当然の如く沸く疑問。
いや、何となくとか言われちゃったらそれまでなんだけどさ。
でもやっぱり気になるじゃないか。

「まあ大した理由じゃないんだけど…栞がね」
「栞? 栞がどうかしたのか?」
「ええ…以前、栞がやけに興奮気味に『祐一さんに一度で良いから膝枕してあげたいんですっ』
 ……って力説してたから、そんなに良いものなのかしらって思って」
「何だよ、それじゃあ香里自身がしたかった訳じゃないじゃないか」
「まあそうなんだけど…でも栞があんまりしつこかったからつい興味が沸いて、ね」
「…そうか、なら仕方ないな」
「ええ、仕方ないのよ」

俯いて俺の方を見つめながら香里はくすっと笑った。

それにしても本当に気持ち良いな、この膝枕…。
……ぬう、何だかちょっと眠くなってきてしまったぞ。
ふと視線を上に上げると、膝枕をしている方の香里も陽気に当てられたのか少しうつらうつらとしている。
まあせっかくだし…このまま、少し眠らせてもらうかな。

そう思うか思わないかの内に、俺はまどろみの中に落ちて行った。









昼休みもとっくに終わり、午後の授業の時間。
皆が教室で授業を受けている中、ぼつんと廊下に立たされている生徒が二人。

「……このあたしが廊下に立たされるなんて…屈辱だわ」
「今時授業に遅刻したぐらいで廊下に立たせるか、普通?」

何故か俺と香里は廊下に立たされていた。

…あの後、二人して眠りこけてしまった俺達は昼休みが過ぎても起きる事なく、そのまま午後の授業に思いっきり遅刻してしまったのだ。
しかし俺だけならともかく、香里までチャイムの音に気付かないくらいに熟睡してしまうとは…膝枕恐るべしと言うべきか。

「それにしても二人して立たされている構図は何だかなあ…」
「そうね……でも、たまにはこんなのも良いわよね」
「ん? 何か言ったか香里?」
「ふふ…何でもないわよ、相沢君♪」

そう言って、香里は自分の唇に当てた人差し指をそっと俺の口に当てたのだった。







お・し・ま・い♪






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