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過去の遺作置き場
2017年08月19日 (Sat)
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2004年01月29日 (Thu)
「あら?」

バスタオルを身体に纏っただけの姿の香里は、着替えの入ったバッグを探りながら疑問の声を漏らした。

「・・・・・・ない」

バッグの中を見つめたまま、誰に言うでもなく小さな声で呟く。
香里の頬を、一筋の冷や汗がつーっと伝った。

「あれ、香里どうかしたの?」

そんな香里を見て不審に思ったのか、ちょうど今更衣室に入ってきたばかりの名雪が声をかけた。

「え?あ、な、何でもないのよ名雪」
「本当? でも顔色悪いよ?」
「ほ、本当になんでもないから。大丈夫だから心配しないで」
「・・・・・そう? なら良いんだけど」
「そうそう。それより早く着替えてしまいましょう」
「うん、そうだね」

そう言うと、名雪はするすると水着を脱いで着替え始めた。
いくら周りに女子しか居ないと言っても、バスタオルも纏わずに着替え始める名雪は大胆なのか羞恥心が欠如してるのか・・・・。
そんな名雪を見て、いつもなら「バスタオルぐらい巻きなさい!」と一言言う香里だが、今日はそれどころではなかった。

「・・・・あたしとした事が・・・・大失態だわ・・・・」

そんな事を呟きながら、ささっと制服を着込む香里。
その動きは神業の如き素早さである。

「とにかく、あと1時間・・・・何とか乗り切らないと」

脱いだ水着とバスタオルをバッグに詰め込むと、香里は足早に更衣室を後にした。


「あ、香里置いてかないでよ~」



























「うーっ、今日の水泳はちょっと寒かったなぁ」

半袖のカッターシャツで剥き出しの腕を摩りながら、祐一がぼやく。

「まあ、今日はちょっと涼しかったしな」
「うん、わたしもちょっと寒かったよー」

同じように半袖のカッターシャツ姿の北川と、ブラウス姿の名雪が相槌を打つ。
どうやら、前の時間の授業が体育で水泳だったらしい。
教室を見回すと、どの生徒も髪の毛が若干湿り気を帯びており、水泳の後だと言うことを一目で連想させる。
どの生徒も祐一達と同じように、前の時間の水泳の話に華を咲かせていた。

ただ・・・・・。
その中でただ一人、机にじっと座っている生徒がいる。

「うぅ・・・・・本当にもう、何でこの学校のブラウスはこんなに生地が薄いのよ・・・・」

よく分からない事をぼやきながら、両腕を胸の前で組んでちょっと俯き加減に席でじっとしているのは香里だった。
いつもなら、名雪と共に祐一の机の周りに集まって一緒に談笑してるところなのだが、何故か今日は自分の席から動こうとしない。

「それにスカートも・・・・・いつもなら気にならないけど、今日ばかりはこの短いスカートが怨めしいわ」

左手だけを下に持って行き、精一杯スカートの端を引っ張る。
そんなに強く引っ張るとスカートが脱げてしまうんじゃないかと心配になるが、力を加減しているのかそんな事にはならないようだ。

それにしてもクラスの中でただ一人、自分の席に座って少し顔を紅潮させたまままったく動こうとしない香里は、誰の目から見ても妙だった。


「なぁ、名雪。香里のやつどうかしたのか?」
「さぁ・・・・。わたしが聞いても何でもないってしか言わなかったし・・・・。
 それに私がまだ着替えてるのに置いて行っちゃうし」
「それは、お前がとろいからだろ」
「う~、酷いよ祐一・・・・・」
「よし、それなら俺が直接聞いてきてやろう!」

そう言って、意気揚々と香里の席に近づいていく北川。
名雪が聞いても駄目だったものを、北川が聞いたところでどうにかなるとは思えないが・・・・。

「よう、美坂。どうしたんだ、さっきからずっと静かだけど」
「・・・・あ~もう」

自分に声をかけてくる北川に対して、悪態を突きながら横目にちらっと視線を向ける。

「・・・・? どうかしたのか?」
「北川君・・・・・今すぐ私の傍を離れなさい・・・・・・さもないと・・・・・」
「う・・・・・わ、悪かった、すまん・・・・」

ゴゴゴゴ・・・・と言うような効果音が聞こえてきそうなほど強大な威圧感を北川に向けながら、じろりと睨み付ける香里。
北川もその威圧感を悟ったのか、冷や汗を垂らしながらその場を後退した。
気持ちは分かるが、何とも情けない男である。


「すまん、やっぱり駄目だった・・・・・」
「だろうと思った」

戻ってきた北川に対して、祐一は最初からさほども期待していなかったようだ。
まぁ、普段の香里の北川に対する態度を見れば誰でも分かるものだが。

「それにしても、本当にどうしたんだろうね~」

いつものようにぼけぼけっとした感じで、名雪は香里の方を眺めながら首を傾げる。

「う~、誰か酷いこと言ってる・・・・」
「誰も何も言ってないぞ、名雪?」
「そうなんだけど・・・・う~う~」

・・・・・地の文に反応しないように。

「まあ、本人が言いたくないならしばらくは様子見で・・・・・ん?」

そんな事を言っていると、突然香里が席を立った。
と言っても勢いよく立ち上がったわけではなく、何かモジモジした様子で周りを気にしながらゆっくりと立ち上がったのだが。
そして、相変わらず両手は胸をスカートを押さえたままなのが気にかかるところである。

「名雪。あたし保健室で休んでくるから、先生に言っておいてもらえる?」
「え、良いけど一人で大丈夫?」
「そうだぞ美坂! だから俺が一緒に付き添いで・・・・・」
「北川君・・・・・ついてきたら、殺すわよ?
「・・・・・は、はい・・・・・」

蛇に睨まれた蛙の如く縮み上がった北川に一瞥をくれると、それ以上何も言わずにそそくさと香里は教室を出て行った。
まるで逃げるかのように・・・・・。

後に残された祐一と名雪は、お互いに顔を見合わせて首を傾げるのだった。










「失礼します・・・・・」

礼儀の為に一応一言言ってはいるが、成る丈中に居る人に聞こえないように声を小さくしながら、そーっと保健室のドアを開ける香里。
傍から見るとちょっと怪しいのだが、幸いなことに周りには誰も居なかった。

「・・・・・どうやら、中にも誰も居ないようね」

出かけているのだろうか?
いつも保健室に常駐しているはずの保険医のお姉さんの姿は見えなかった。
また、他の生徒が来ている様子もない。

「やるなら今のうちね・・・・誰かが来る前に・・・・・」

そう言うと香里は素早く保健室の中に入り、近くにある戸棚を物色し始める。
普段の香里からは想像し難い姿だが、それほどまでに切羽詰っているのだろう。
何がかは不明だが。
とにかく誰かが来てしまったら終わりな為、必死になって何かを探す。

「え~と、どこにあるのかしら・・・・・これはネットだし・・・・・あ、あった!」

そう言って香里が手にしたものは一巻きの包帯。
傷口の上に巻いたり、湿布の上に巻いたりするあれである。
いったい、これを何に使うと言うのか。


「え~と・・・・・さ、流石に誰も居ないからと言ってこんな部屋の真ん中では拙いわね・・・・」

何がどう拙いのか分からないが、どうやら他人に見られると拙いらしい。
もうすでに授業開始のチャイムが鳴っているとは言え、誰も来ないと言う保障はないので誰にも見られない所へ移動する必要があるようだ。
とりあえず、どこか隠れる場所がないかと見回すと、奥に保健室には必ずあるベッドが見えた。
ベッドの周りには白いカーテンが引かれているので、あの中ならいきなり誰かが来ても見られる心配はない。

「あそこなら大丈夫そうね・・・・・・そうと決まれば」

そう言うと香里はささっとベッドのある所へ向かい、シャッと白いカーテンを引いてしまった。
これで外からは何も見えない。
・・・・・・・影だけは見えてしまうが。
まぁ、そこまで気にしていたらキリがないだろう。

「とにかく、早く事を済ませた方が良いわね・・・・・」

そう呟くと、何を思ったのか突然香里はブラウスを脱ぎ始めた。
ブラウスの下にはシャツなどを着ていなかったようで、香里の白い肌丸く膨らんだ丘が・・・・・・って。
なぜか香里はブラジャーをしていなかった。
素肌の上に直接ブラウスを着ていたようだ。

「本当にもう・・・・栞が『水着なんて最初から着たまま行けば良いんですよ』なんて言うから。
 帰ったらお仕置きね」

つまり、香里は家から直接水着を着込んできたは良かったが、着替えの下着を忘れてしまったと言う事らしい。
・・・・・・ということは、今まで香里はノーブラノーパンでずっと居たのだろうか?
この薄い生地のブラウスと短いスカートでよくばれなかったものである。

「え~と、とりあえずこれで良いかしら?」

そう言った香里の胸には、先ほどの包帯が何重にも重ねて巻かれていた。
包帯をサラシの代わりに使ったらしい。
確かに、これならブラウスから透けても見える心配がないので手で隠し続ける必要も無い。

「さて、とりあえずはこんなもので良いわね・・・・下も何とかした方が良いんだろうけど、
 もう包帯もないし・・・・・ま、何とかなるでしょ」

先ほど脱いだブラウスを再び身に纏うと、そのまま香里はベッドの中にもぐりこんだ。
本当は授業に戻っても良いのだが、まだ下に不安もあるのでそのままボイコットする事にしたのだった。









キーンコーンカーンコーン。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あら?」

校内に響き渡るチャイムの音。
気が付いて壁掛け時計に視線を移すと、すでにHLも終わる時間だった。
香里は知らない内に熟睡していたらしい。

「ちょっと寝過ぎたわ・・・・・」

ここ最近、夜遅くまで勉強していることが多かったので寝不足だったのだろう。
それにしても6時限目の終了のチャイムにも気付かないなんて・・・・・・いくらなんでもちょっと寝すぎたかしらと思う香里だった。

「とにかく、この後まだ演劇部の部活があるし早く行かないと・・・・って、きゃあっ!」

起き上がって自分の身体を見た香里は、思わず悲鳴を上げた。
なぜなら、香里の現在の姿がトンでもない事になっていたからだ。

シーツの中で寝返りを打って動いたせいか、先ほど胸に巻いた包帯が緩み何故かブラウスのボタンがいくつか外れいた為少し胸が肌蹴ていた。
それだけでなく、下のスカートは捲れ上がり下半身が露になっていて誰かが見たら思わず鼻血を出してしまいそうな状態になっていたのだ。
幸い誰も居なかったので見られる心配はないが・・・・・それでも、これは無茶苦茶恥ずかしい格好である。

「眠っててすっかり油断してわ・・・・・・・と、とにかく早く直さないと」

ささっと乱れた包帯と制服を直す。
2度目だからか、先ほどよりは短い時間で包帯を巻き終えた。
・・・・・相変わらず下は寒いが。

「誰も居ないわね・・・・・・? じゃ、今のうちに・・・・」

どうして保健室がずっと無人なのかが気にかかるが、今の香里にはそんな事をいちいち気にかけている余裕はない。
なるべくスカートが捲くれないように手で押さえながら、さささっと保健室から抜け出すのだった。










「あ~、もうこんな時間・・・・急がないと」

時計を眺めながら、はぁっと溜息を吐きつつ呟く。
HLも終わり大分時間が経ってしまっているので、いい加減部活も始まっている頃だろう。
別に遅れたからと言って何かあるわけではないのだが、部長である手前上遅刻してくるのは後輩達に示しがつかない。
とにかく急ごうと、相変わらず片手でスカートを抑えたままで、香里は足早に廊下を駈けながら部室へ急いだ。

と、ちょうど廊下の角に差し掛かった時である。

「お、香里。もう大丈夫なのか?」
「え?」

突然目の前の廊下の影から祐一が現れた。
いや、本当は普通に歩いて現れただけなのだが、時計を気にしながら走っていた香里は祐一に気付かなかったのだ。

「ち、ちょっ、相沢君どいてっ!」
「ど、どいてって・・・・・おわぁっ!」
「きゃああっ!」

どっしーーん!

車は急に止まれない・・・・・いや、走る香里は急に止まれない。
祐一に気付くのが遅れたためにスピードを落とさなかった香里は、そのまま祐一に体当たりをかましてしまった。
祐一の方も、まさか香里がそのまま突進してくるとは夢にも思わなかったのか、受身も取れずにそのまま成す術も無く押し倒された。


「いたたた・・・・・・ごめんなさい相沢君、大丈夫?」

ぶつけた頭を摩りながら声をかけるが、何故か祐一からは反応が無い。
と言うか、香里の視界の範囲内に祐一の姿が見えなかった。

「あら、相沢君? どこに・・・・・・・んあっ!
「もがもがもが!」

突然くぐもった声が聞こえたのと同時に、下半身に妙な感覚を覚えて変な声をあげてしまう香里。
思わず周りを見回したが、どうやら誰にも聞かれなかったようだ。

それにしても、今の声と感覚は一体・・・・・・・などと考えていると、また下で何かがもぞもぞと動く。

「ふがっふがっ!」
「ん・・・・やっ、ちょっと何・・・・・・?!」

慌てて視線を下に向けると、そこには仰向けで自分の下敷きになってもがいている男子生徒の姿が。
てゆーか、さっきぶつかった祐一だろう。
お互いに正面からぶつかったのに、どうして祐一が下敷きになっているのだろうか。

「・・・・・・って、下敷き?」

いや~な予感がして、改めて下を見る。
視界に移るのは祐一の身体だけで顔が見えない。
身体からずっ~と視線を辿って行くと、やがて首から上の部分は香里のスカートの中に・・・・・・。




刹那、校内に一際の悲鳴が響き渡った。




「きゃああああああああっっっ!!!!!」




校内中に響き渡ったであろう大きな悲鳴を上げて、大慌てでその場から逃げるようにどく香里。
しかし時はすでに遅かったのか、香里がどいた瞬間祐一は大量の鼻血を噴出したのだった。
どうやら、思いっきり"見て"しまったらしい。

何を?とは、聞くだけ野暮と言う物である・・・・・・・・・・・・・・・。




・・・・・程なくして、大量の血を失って貧血を起こした祐一が、救急車で運ばれて行く姿が見られたのだった。



















次の日の朝――――。


「えへへ~、今日の体育は水泳です~」

そんな事を言いながら、満面の笑顔で朝食のトーストをパクついているのは誰あろう栞である。
何せ初めての水泳の授業なので嬉しくて仕方ないのだろう。

しかし、そんな栞に反して姉の方はどんよりである。
昨日、大事な所を祐一に見られてしまった事をまだ気にしているようだ。

「栞・・・・・そんなに水泳が嬉しい?」
「勿論です! ほら、すでに下に水着も着てるんですよ」

そう言ってちょっとスカートを捲り上げると、確かに学校指定のスクール水着が見て取れた。

「楽しみです~」
「・・・・・・・・」

嬉しそうな栞をどこか怨めしそうな目で見ていた香里は、食事もそこそこにテーブルを後にした。

「・・・・・何かお姉ちゃん元気なかったけど、どうしたんでしょう?」

自分のせいだと知らない栞は呑気に首を傾げていた。



その頃、自室に戻ったと思われた香里は、何故か栞の部屋の中に居た。
そして、何やらごそごそと栞のバッグを漁っている。

「栞・・・・・元はと言えばあなたのせいであんな目に遭ったんだから・・・・・あなたにも同じ目に遭ってもらうわよ?」

そんな事を言いながら香里がバッグの中から取り出したのは、栞の小さくて可愛い一組の下着。
その下着を無造作に自分のポケットの中に突っ込むと、バッグを元通りに直して何事もなかったかのように栞の部屋を後にしたのだった。






その日・・・・・・学校で耳を劈くような栞の悲鳴が聞こえたり、昨日と同じく病院に運ばれて行く祐一の姿が見られたりしたと言う。







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