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過去の遺作置き場
2018年12月14日 (Fri)
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2002年05月25日 (Sat)
アセリア暦912年―――。
大陸を支配するベイル帝国により、人々は苦痛の日々を強いられていた。
帝国は民に重い税をかけるだけでなく、帝国の崇める神への生贄と称して子供狩りまで行っていた。
帝国の圧制に反発するものは多く、幾度と無く反乱が起きていたが、その多くはまとまりのないまま簡単に撃破され、大勢の人が無駄に帝国兵の犠牲となるばかりであった。
もはや人々に希望の光などないのか・・・そう皆が思い始めていた頃、一つの小さな光が、北部の辺境ベイグランドでわずかな輝きを放っていた・・・。

「たぁっ!」
キン、カィン、キィン!
大人びた女性騎士と15,6歳ぐらいの少年が剣を交えている。
少年の太刀筋は悪くはないものだったが、女性騎士にはことごとく軽くあしらわれている。
しかし、

「てぇい!!」
「・・・・!」
カキィン!

一瞬の隙を突き、少年の全力を込めた一閃が女性騎士の剣を弾き飛ばした。

「・・・・・」
「ハァハァハァ・・・やった・・・!」
「フゥ・・・腕を上げられましたね、ルクシス様」

女性騎士は、弾かれた剣を拾うと鞘に収めながらそう言った。

「ははは、サイリアの教え方が上手いからだよ」
「ふふ、ありがとうございます」

サイリアと呼ばれた女性は、はにかみながらルクシスと呼ばれた少年の方に向き直る。
ルクシスの方も剣を鞘に収めながら、サイリアの方に近づく。

「強くなられましたね・・・ルクシス様。そろそろ背だけでなく剣の腕の方も追い着かれてしまうかも知れませんね」

サイリアは少し嬉しそうに、ルクシスを見つめる。
その目は、成長著しい息子を見るようであり愛しい者を見るような目でもあった。

「そんな事ないさ。サイリアに本当に追い着くには、まだまだ練習しないと」

ルクシスは、一度鞘に収めた剣を再び抜くと、思いっきり剣を2,3回振りぬく。
もう一度剣を鞘に収めると、ルクシスはサイリアの方に向き直った。

「いよいよ、明日・・・・だな」
「・・・はい」

サイリアは小さく頷く。
明日、ルクシスは遂に決起する事を決めた。
まだ子供で、何も出来ずにサイリアに連れられて、国を逃げ出したあの日から8年・・・ずっと、待った。
帝国に対抗する為の兵を集め、そして自分を鍛えて・・・ようやく、その時が来たのだ。

「まだ、僕たちの力は帝国に比べれば微々たるものだ・・・でも、最近各地で反乱が起きている。その人たちと協力すれば、きっと・・・」
「ルクシス様・・・・」

そんな事を話していると、突然遠くから人の呼ぶ声がした。

「ルクシス様ぁ~!」
「ん?」

声のした方に振り向くと、サイリアよりもやや軽装な鎧を着た女性騎士がこちらに向かって走ってくる。

「あれはルーシアですね・・・」
「そうみたいだね。何かあったのかな」

そう経たぬ内に、ルーシアと呼ばれた女性騎士は二人の所に辿り着いた。
全力で走ってきたのか、少し肩で息をしている。

「フゥ・・・ルクシス様、ここにおられたんですか。サイリア様も」
「あぁ、ちょうどサイリアに稽古をつけてもらってた所さ」
「そう言う時は私も呼んでくださいよぉ。サイリア様に剣を教えてもらえる機会なんてそうないんですから・・・」

ルーシアは少し拗ねた様に唇を尖らせる。
元々の可愛さも手伝ってか、ルクシスにはその表情が非常に可愛く見えた。

「それよりルーシア、何か用があったのではなかったの?」
「あぁ!?いっけない、忘れる所だった!」

サイリアに言われて、ルーシアがハッとする。
どうやら、少しおっちょこちょいな所があるようだ。

「ラーヴァさんがお話があるそうです。二人ともすぐに来て欲しいと・・・」
「ラーヴァが?・・・分かった、すぐ行こう」

二人は稽古で流した汗を拭くのもそこそこに、聖堂へと向かった。




聖堂へと続く道は両脇に湖があり、その湖の中から緑の多い茂る木が生え聖堂へと続く道をトンネルのように覆っている。
木漏れ日が射す道を、ルクシスとサイリアの二人は歩いていた。
先に立って歩くルクシスは、成人してから1年経ってる事もあり、非常に逞しく見える。
それに、やはり王族の血か・・・どことなく貴風がある。
子供の頃からルクシスを弟にように見守ってきたサイリアでも、時たまハッとしてしまうほどだ。

「サイリア?」
「え、あ、何ですか?」

何となくボーッとルクシスの事を見ていたサイリアは、不意に振り返って声をかけられた為、つい動揺してしまう。

「いや、さっきから全然話さないから、どうしたのかと思ってね。何か考え事かい?」
「い、いえ・・・別に・・・。ただラーヴァが私たちを呼び出すなんて珍しい事もあるものだと・・・」

サイリアはどうにかこうにか誤魔化した。
どもっている時点で、不振に思われそうなものだが、幸いルクシスは何も感じなかったようだ。

「そう言えば、そうだね・・・彼女はあまり聖堂の司祭以外とは話したがらないのに」
「何かあったのでしょうか?」
「まさかとは思うけど・・・」
「ここであれこれ考えても仕方ありませんね・・・。ラーヴァに会えば分かる事です」
「・・・そうだね」

そうこう話している内に、聖堂が間近に現れた。
聖堂の前には、司祭らしき男が二人立っている。
司祭らしき男達は、ルクシスらの姿を見るとサッと駆け寄ってきた。

「お待ちしておりました、ルクシス様。サイリア様。ラーヴァ様が奥でお待ちです、中へ・・・」
「分かった」

男に案内されるままに中へ入り、そのまま聖堂の奥へと二人は歩いて行く。
ほどなくして、聖堂のラーヴァの部屋についた。
中に入るとラーヴァが二人を出迎えた。

「ようやく来てくれましたか、お二人とも・・・」
「待たせてすまない。それで話と言うのは?」
「はい・・・」

ラーヴァはちょっと俯いて躊躇したが、意を決したように顔を上げた。

「ルクシス様は・・・確か、明日出立されるのでしたね?」
「あぁ、そうだけど・・・それが?」
「お願いがあります・・・私も一緒に連れて行っていただきたいのです」
「何だって?」

突然のラーヴァの申し出に、ルクシスもサイリアも唖然としてしまった。
まさか、ラーヴァが一緒に行くなどと言うとは思いもしなかったからだ。

「しかし・・・」
「お願いです・・・私は少しでもあなたたちのお役に立ちたいのです。
 あの日、助けて頂いたお礼も含めて」

2年ほど前に、野生のモンスターに襲われそうになっていた所を、ルクシスとサイリアが助けた事がある。
おそらくそれの事を言っているのだろう。

「どうする、サイリア?」
「この様子だと駄目だと言っても無理矢理ついてきそうですね・・・良いのではないですか?
 何より彼女はシスターです。傷ついた兵たちの治療にも役立つでしょう」
「そうだな・・・。ラーヴァ、分かったよ。一緒に行こう」
「ありがとうございます、ルクシス様・・・」


その後、ルクシス達はそれぞれ自分たちの部屋に戻った。
明日には、生きて戻れるかどうかも分からない長い戦いが待っている。
戦士達は明日の戦いに対するそれぞれの思いを胸に秘め、静かな眠りについていった。





ルクシス、サイリア、ラーヴァ・・・後にアルトリア解放戦争と呼ばれるこの戦いで、大きな役割を果たす3人の長い戦いが今、始まろうとしている。
この戦争の結果がどうなるのか、勝利の女神は誰に微笑んでいるのか・・・今は、まだ誰も知らない。
ただ、夜空を照らす月だけが、何かを暗示するかのように紅く輝いていた。



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