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過去の遺作置き場
2017年12月13日 (Wed)
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2002年09月07日 (Sat)
7月22日 その2



「ただいまー」
「お帰りなさい、名雪♪」
「う゛・・・・ゆ、祐子ちゃん・・・・」

お昼過ぎ、部活から帰って来た名雪を私は満面の笑みで出迎えた。
案の定と言うか・・・・名雪は、複雑な表情してるけど。
今朝方、あの事を追求しようとしたら、

『あ、大変、1500mを三分で走らなきゃ間に合わないよ!』

とか言われて、逃がしちゃったのよね~。
あの時は、言葉からして微妙に動揺してるのが丸分かりだったのよね。
でも、部活が終わって帰ってきた今なら大丈夫。
ふふふ・・・・もう逃がさないわよ♪

「そ、それじゃあ私シャワー浴びてくるね」
「終わったらで良いから、すこーし私のお部屋に寄ってくれるかなー♪」

そそくさと、自分の部屋へ行こうとする名雪の背中に向けて、そう声をかける。
・・・・一瞬、びくってしたわね。

「きょ、今日は夏休みの課題やらなきゃ・・・・」
「そうね、早いうちに終わらせれば後が楽よねー。だったら、一緒にやりましょう。その方が早く済むし♪・・・・だから後で部屋に寄ってね?」
「・・・・う、うん」

有無を言わせぬ口調で一気にそう言うと、とうとう名雪は観念したのかそう言って頷いた。
ふふふ・・・・逃がさないわよ、名雪ちゃん♪









「さてと・・・・それで、『ゆういち』君って、だれ?」

嫌そうな顔をして私の部屋を訪ねて来た名雪に、単刀直入にそう言う私。
一方、名雪の方はあたふたとしている。

「ね、ねえ、それより、自由研究どうしようか? 私はお裁縫で『けろぴー(全長180cm)』を作ろうと思うんだけど」
「そうね、名雪のしたいようにすれば良いと思うわ。・・・・それで、『ゆういち』君って、だれ?」
「で、でも、高校生の宿題に夏休みの思い出の作文はないよねー」
「そうね、私もそう思うわ。・・・・それで、『ゆういち』君って、だれ?」
「や、やっぱり、まだ課題をするには早いよね。こ、今度にしようか?」
「・・・・イチゴサンデー3つ」
「幼馴染の男の子だよ」(1秒)

・・・・ホント、名雪って分かりやすい性格してるわ。




「それでね、それでね・・・・」

最初は餌で釣っていたけれど、そのうち名雪は自分から彼の事を話してくれるようになった。
初めてあった時の事。
一緒に買い物に行ったこと。
夏休みの課題のこと。
しばらく会えなくなってしまった事。
久しぶりに会ったらとても大きくなっていて、ドキドキしてしまったこと。
色々な事を話してくれた。
でもこれって・・・・もしかして私、惚気られてる?
でも、聞いていて一つ分かった事がある。

「名雪は・・・・ホントにその男の子が好きなのね」

その一言を聞いた瞬間、名雪が耳まで真っ赤になった。
それこそ、ボンと言う音が聞こえる程に。

「わ、わ、ゆ、祐子ちゃん何を・・・・」
「そうなんでしょう? そこまで嬉しそうな顔で熱心に話すんだもの。間違いないわよね?」
「う・・・・うん・・・・」

そう言って、真っ赤になったまま顔を俯かせる名雪。
照れちゃって・・・・。

「それで? 結局、その男の子とは付き合ってるの?」
「わ、私と祐一が付き合ってるわけないよ!! やっぱり幼馴染だし、今の関係を崩したくなかったし、ライバルも結構多いし・・・・あ、で、でも、つ、付き合う可能性が全然ないわけでもなくて・・・・」

手をわたわたと振り、名雪にしては珍しいくらいの大声をあげる。
ホントに好きなのね~、その『ゆういち』君って人の事が。

「・・・・にしても変ねぇ。名雪とそんなに仲の良い人がいるのに、私が見た事もないなんて・・・・今、その『ゆういち』君はどうしてるの?」
「・・・・とっても・・・・とっても遠いところに行っちゃった」

今までの幸せそうな顔が一転して、悲しそうな顔をした名雪がぽつりと言った。
顔を背けてそんな事を言う名雪がとても辛そうで・・・・私はそれ以上彼の事を聞く気にはなれなかった。
・・・・それにしても、こんなに可愛い名雪(こ) を悲しませるなんて、何て男かしら!
もしも遭ったら・・・・その時は覚悟を決めてもらわないとね。

「とっても遠くて・・・・でも、一番近いところ」

「え?」

名雪は、何かを囁くように言った。
よく聞き取れなかった私は、もう一度聞こうとしたけれど・・・・。

「名雪ー、祐子さーん、ごはんですよー」
「今行くよー! さ、行こう?」

すっかりいつもの調子に戻った名雪を見て、結局聞く事ができなかった。
名雪と『ゆういち』君って男の子の間に何があったんだろう?
そんな事を考えているうちに、私は忘れていた胸の痛みが戻っている事に気が付いた・・・・。




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