過去の遺作置き場
「あら、珍しい」
俺と名雪の顔を見て、挨拶もせずにそんな事を言う香里。
「香里、どう言う意味だ?」
「言葉とおりよ」
そんなに、俺と名雪が早く学校来たのが珍しいのか。
・・・・否定できないな。
俺と名雪の顔を見て、挨拶もせずにそんな事を言う香里。
「香里、どう言う意味だ?」
「言葉とおりよ」
そんなに、俺と名雪が早く学校来たのが珍しいのか。
・・・・否定できないな。
とりあえず自己完結して香里に軽く挨拶すると、自分の席へと座る。
名雪は自分の席についた途端、再び眠りについたようだ。
・・・・ほんとによく寝るよな、こいつ。
さてと、今日の1限目は石橋の授業だったな・・・・となると、HRからそのまま授業になるか。
「おい、相沢」
「んあ?」
北川に呼びかけられて後ろを振り向く。
その際、間抜けな声を出してしまったが・・・・まぁ気にしないでおこう。
「で、何だ?」
「うむ、実はな・・・・今日、新任の教師が一人が来るらしい」
「ほぉ?」
それは初耳だな・・・・。
「でな、うちのクラスの副担任になるらしいんだが・・・・美人らしいぞ」
最後の部分は声を潜めてそう言った。
美人・・・・という事は、女性だと言う事だろう。
まさか、男に美人などと言う形容は使うまい。
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン。
などと話しているうちにチャイムがなった。
「よ~し、全員席につけ」
それと同時に石橋が入ってくる。
「お、あとは自分の目で確かめるんだな」
それだけ言うと、北川は引っ込んだ。
ふぅむ、しかし新任教師ねぇ。
一体、どんな人だろうか?
別に俺は北川じゃないので、美人かどうか何てことはどうでも良いんだが・・・・どんな女性なのかは気になるからな。
「さてと、今日は新任の教師を紹介する。うちのクラスの副担任になるから皆も早く打ち解けるように」
「先生ーっ、男ですか女ですか?!」
男子生徒の一人が、転校生が来た時みたいな事を質問する。
こいつは確か斉藤と言ったっけか。
・・・・ま、明日には忘れてるだろうな。
「うむ、女性だ。ちなみに男子共・・・・期待して良いぞ」
「「「「「おおおおぉぉーーーっ」」」」」
クラスの男子達から、溜息とも取れるような声が上がる。
何でこう言う時だけ、こんなに息ぴったりなんだ。
「それじゃ、沢渡先生、入ってください」
石橋が廊下に向けてそう声をかけるた。
・・・・ん?・・・・さわたり・・・・?
まさか、な。
少し間をおいて、引き戸が開かれる。
そして、そこから教室内へ入ってきた女性を見て、俺は驚いた・・・・。
「初めまして、このクラスの副担任となった沢渡真琴と言います。まだ赴任したばかりで色々と至らない事もあるかと思うけど、宜しくね」
「うおおお、無茶苦茶美人じゃねぇか!」
「良いぞ、これで残り1年の高校生活をバラ色に過ごせる・・・・!」
「まったく、煩いわね男子は。相沢君は・・・・って、相沢君?」
「うにゅ?・・・・祐一、どうしたんだおー?」
香里と名雪が何か言ってるみたいだったが、俺には何も聞こえていなかった。
俺は、その新任教師の顔を驚愕とも言える表情で凝視したままつぶやいた。
「沢・・・・渡・・・・真琴・・・・」
結局1限目の石橋の授業は自習となり、新しくやってきた教師への質問タイムへと雪崩れ込んだ。
彼氏はいるのかだのスリーサイズはだの好きなタイプはだの、男子共が沢渡先生の周りに集まって矢継ぎ早に質問を繰り返している。
俺は、特にその輪に加わる気にもなれず、自分の席でそんな状況を遠巻きに眺めていた。
いや、沢渡先生を眺めていたと言った方が正しいかもな。
「すごい状態ね」
いつの間にか俺の席の横に立っていた香里がそう言ってきた。
どこか声に棘があるような気がしないでもない。
「それにしても、凄い偶然だよね~。真琴とまったく同じ名前だなんて」
「偶然なんかじゃない」
「「え?」」
俺の言葉に、同時に反応する二人。
「どう言う事?」
「・・・・いや、何でもない」
言いかけた言葉を飲み込み席を立つ。
「ちょっと、屋上行ってくる」
「え、でもまだ授業中・・・・」
「こんな状況じゃまともな授業にはならんだろ・・・・じゃな」
「あ、ちょっと相沢君!」
何か言いかけた香里を無視して、俺は教室を後にした。
屋上へと出る重い扉を開くと、ビュゥッと一陣の風がふいて俺の横を通り過ぎて行った。
目を細めながら屋上に出ると、フェンスに体重をかけてもたれかける。
「沢渡真琴か・・・・まさか、こんな所でまた会えるとは思わなかったな・・・・」
溜息を吐いて空を見上げる。
真っ青な空。
その空のスクリーンに、子供の頃の記憶がよみがえり映像として映し出される。
「それにしても、教師か・・・・」
俺はもう一度、溜息を吐いた。
「あ、見つけたわよ、不良生徒」
「え?」
いきなり喋りかけられて振り向くと、そこには沢渡先生が立っていた。
屋上の入り口の前に立ち、腰に手を当てて少し怒った顔をしている。
「駄目よ、授業中に抜け出したりしたら」
「・・・・すいません」
「まぁ、良いんだけどね。私も抜け出して来た口だし」
俺の隣まで来て同じようにフェンスにもたれるとそんな事を口にする。
「良いんですか?」
「良いのよ。もう男子生徒達が何度も何度も同じような事聞いてくるから疲れちゃった」
そう言いながら、沢渡先生はふふっと笑った。
・・・・何も変わってないな。
あの頃・・・・憧れていた頃のままだ。
何となく嬉しくなって、俺は笑っていた。
「あ、いくら相沢君でも笑うなんて酷いわよ」
「はは、すみません・・・・ってあれ? 俺自分の名前名乗りましたっけ?」
「うぅん、名乗ってないわよ」
「じゃあ、何で・・・・?」
俺が彼女の事を知っていても、彼女は俺のことを知らないはずなのに・・・・。
「だって小学校の時、同じ学校だったでしょ?」
「え?!」
俺のこと知ってた・・・・?
でもあの頃、俺は一度も話したことなかったはず。
知ってるわけが・・・・。
「もう覚えてないかなぁ。小さい頃、公園で泣いてる所を慰めた事あったんだけど」
「公園で・・・・あ!!」
思い出した・・・・。
小さい頃、可愛がってた子犬が突然死んで、ずっと公園で泣いてた事があった。
確か、その時ずっと俺を慰めていてくれたのが彼女だった。
もうすっかり忘れてたけど、それがきっかけで俺は彼女に憧れるようになったんだっけ。
「それにしても、よくそんな事覚えてますね・・・・」
「ま、まぁ・・・・ね」
何故かどもる沢渡先生。
どうかしたのか?
「それより、そろそろ教室戻りましょ。いつまでもここでサボってると怒られちゃう」
「そうですね、それじゃ戻りましょうか、沢渡先生」
「真琴」
「え?」
「私の事は名前で呼んでくれれば良いわよ。その方が気が楽だし」
「でも、生徒が教師を名前で呼ぶのは・・・・」
「良いから良いから。あ、私も祐一君って呼ばせてもらうからね♪」
そう言いながら、沢渡・・・・真琴先生は俺の手を引いて行く。
・・・・ま、良いか。
そして、教室に戻った俺と真琴先生は案の定石橋にこってりと絞られた。
真琴先生は俺の方を見ながら、『てへっ』と言った感じで舌を出してたけど。
高校生活最後の一年間は、楽しくなりそうだな・・・・。
俺はそんな事を考えていた。
その後、名雪や香里、北川からしつこく追求された事は言うまでもない。
名雪は自分の席についた途端、再び眠りについたようだ。
・・・・ほんとによく寝るよな、こいつ。
さてと、今日の1限目は石橋の授業だったな・・・・となると、HRからそのまま授業になるか。
「おい、相沢」
「んあ?」
北川に呼びかけられて後ろを振り向く。
その際、間抜けな声を出してしまったが・・・・まぁ気にしないでおこう。
「で、何だ?」
「うむ、実はな・・・・今日、新任の教師が一人が来るらしい」
「ほぉ?」
それは初耳だな・・・・。
「でな、うちのクラスの副担任になるらしいんだが・・・・美人らしいぞ」
最後の部分は声を潜めてそう言った。
美人・・・・という事は、女性だと言う事だろう。
まさか、男に美人などと言う形容は使うまい。
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン。
などと話しているうちにチャイムがなった。
「よ~し、全員席につけ」
それと同時に石橋が入ってくる。
「お、あとは自分の目で確かめるんだな」
それだけ言うと、北川は引っ込んだ。
ふぅむ、しかし新任教師ねぇ。
一体、どんな人だろうか?
別に俺は北川じゃないので、美人かどうか何てことはどうでも良いんだが・・・・どんな女性なのかは気になるからな。
「さてと、今日は新任の教師を紹介する。うちのクラスの副担任になるから皆も早く打ち解けるように」
「先生ーっ、男ですか女ですか?!」
男子生徒の一人が、転校生が来た時みたいな事を質問する。
こいつは確か斉藤と言ったっけか。
・・・・ま、明日には忘れてるだろうな。
「うむ、女性だ。ちなみに男子共・・・・期待して良いぞ」
「「「「「おおおおぉぉーーーっ」」」」」
クラスの男子達から、溜息とも取れるような声が上がる。
何でこう言う時だけ、こんなに息ぴったりなんだ。
「それじゃ、沢渡先生、入ってください」
石橋が廊下に向けてそう声をかけるた。
・・・・ん?・・・・さわたり・・・・?
まさか、な。
少し間をおいて、引き戸が開かれる。
そして、そこから教室内へ入ってきた女性を見て、俺は驚いた・・・・。
「初めまして、このクラスの副担任となった沢渡真琴と言います。まだ赴任したばかりで色々と至らない事もあるかと思うけど、宜しくね」
「うおおお、無茶苦茶美人じゃねぇか!」
「良いぞ、これで残り1年の高校生活をバラ色に過ごせる・・・・!」
「まったく、煩いわね男子は。相沢君は・・・・って、相沢君?」
「うにゅ?・・・・祐一、どうしたんだおー?」
香里と名雪が何か言ってるみたいだったが、俺には何も聞こえていなかった。
俺は、その新任教師の顔を驚愕とも言える表情で凝視したままつぶやいた。
「沢・・・・渡・・・・真琴・・・・」
結局1限目の石橋の授業は自習となり、新しくやってきた教師への質問タイムへと雪崩れ込んだ。
彼氏はいるのかだのスリーサイズはだの好きなタイプはだの、男子共が沢渡先生の周りに集まって矢継ぎ早に質問を繰り返している。
俺は、特にその輪に加わる気にもなれず、自分の席でそんな状況を遠巻きに眺めていた。
いや、沢渡先生を眺めていたと言った方が正しいかもな。
「すごい状態ね」
いつの間にか俺の席の横に立っていた香里がそう言ってきた。
どこか声に棘があるような気がしないでもない。
「それにしても、凄い偶然だよね~。真琴とまったく同じ名前だなんて」
「偶然なんかじゃない」
「「え?」」
俺の言葉に、同時に反応する二人。
「どう言う事?」
「・・・・いや、何でもない」
言いかけた言葉を飲み込み席を立つ。
「ちょっと、屋上行ってくる」
「え、でもまだ授業中・・・・」
「こんな状況じゃまともな授業にはならんだろ・・・・じゃな」
「あ、ちょっと相沢君!」
何か言いかけた香里を無視して、俺は教室を後にした。
屋上へと出る重い扉を開くと、ビュゥッと一陣の風がふいて俺の横を通り過ぎて行った。
目を細めながら屋上に出ると、フェンスに体重をかけてもたれかける。
「沢渡真琴か・・・・まさか、こんな所でまた会えるとは思わなかったな・・・・」
溜息を吐いて空を見上げる。
真っ青な空。
その空のスクリーンに、子供の頃の記憶がよみがえり映像として映し出される。
「それにしても、教師か・・・・」
俺はもう一度、溜息を吐いた。
「あ、見つけたわよ、不良生徒」
「え?」
いきなり喋りかけられて振り向くと、そこには沢渡先生が立っていた。
屋上の入り口の前に立ち、腰に手を当てて少し怒った顔をしている。
「駄目よ、授業中に抜け出したりしたら」
「・・・・すいません」
「まぁ、良いんだけどね。私も抜け出して来た口だし」
俺の隣まで来て同じようにフェンスにもたれるとそんな事を口にする。
「良いんですか?」
「良いのよ。もう男子生徒達が何度も何度も同じような事聞いてくるから疲れちゃった」
そう言いながら、沢渡先生はふふっと笑った。
・・・・何も変わってないな。
あの頃・・・・憧れていた頃のままだ。
何となく嬉しくなって、俺は笑っていた。
「あ、いくら相沢君でも笑うなんて酷いわよ」
「はは、すみません・・・・ってあれ? 俺自分の名前名乗りましたっけ?」
「うぅん、名乗ってないわよ」
「じゃあ、何で・・・・?」
俺が彼女の事を知っていても、彼女は俺のことを知らないはずなのに・・・・。
「だって小学校の時、同じ学校だったでしょ?」
「え?!」
俺のこと知ってた・・・・?
でもあの頃、俺は一度も話したことなかったはず。
知ってるわけが・・・・。
「もう覚えてないかなぁ。小さい頃、公園で泣いてる所を慰めた事あったんだけど」
「公園で・・・・あ!!」
思い出した・・・・。
小さい頃、可愛がってた子犬が突然死んで、ずっと公園で泣いてた事があった。
確か、その時ずっと俺を慰めていてくれたのが彼女だった。
もうすっかり忘れてたけど、それがきっかけで俺は彼女に憧れるようになったんだっけ。
「それにしても、よくそんな事覚えてますね・・・・」
「ま、まぁ・・・・ね」
何故かどもる沢渡先生。
どうかしたのか?
「それより、そろそろ教室戻りましょ。いつまでもここでサボってると怒られちゃう」
「そうですね、それじゃ戻りましょうか、沢渡先生」
「真琴」
「え?」
「私の事は名前で呼んでくれれば良いわよ。その方が気が楽だし」
「でも、生徒が教師を名前で呼ぶのは・・・・」
「良いから良いから。あ、私も祐一君って呼ばせてもらうからね♪」
そう言いながら、沢渡・・・・真琴先生は俺の手を引いて行く。
・・・・ま、良いか。
そして、教室に戻った俺と真琴先生は案の定石橋にこってりと絞られた。
真琴先生は俺の方を見ながら、『てへっ』と言った感じで舌を出してたけど。
高校生活最後の一年間は、楽しくなりそうだな・・・・。
俺はそんな事を考えていた。
その後、名雪や香里、北川からしつこく追求された事は言うまでもない。
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