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過去の遺作置き場
2017年12月13日 (Wed)
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2002年09月20日 (Fri)
7月29日 その6



「ふ、不覚・・・」

私は、クルーザーの上でそう呟いた。

あの後、順調に泳いでいた私だけど・・・準備運動が完全じゃなかったのか、足を攣ってしまった。
流石に泳ぎ続ける事は無理だったので、真琴同様北川君に吊り上げられてリタイア。
う~・・・こうなったら、名雪に賭けるしかないわ。
名雪! 絶対に、香里に負けちゃ駄目よ!!




ふと、後ろに視線を移す。
美汐やあゆはどうなったかしら・・・って、あら?
二人の姿が見えない・・・。
その遥か後ろに栞が居るのは分かるんだけど。
一体、何処へ・・・ん?
ちょっと離れた所に、二つの水飛沫と必死にばたつく手足が・・・って、二人とも溺れてるんじゃないの!?

「北川君! あゆと美汐が溺れてるからすぐに引き上げて!!」
「な、何!? 何処だ?!」
「あそこ! あの水飛沫の立ってるところ!!」
「あ、あそこか!」

そう叫ぶと、北川君はクルーザーをその飛沫の立つ方へと移動させた。
・・・ホントに北川君が運転してたのね。
ちょっと信じられない・・・。
そんな事を考えてるうちに、クルーザーは美汐達のところへと辿り着いた。
すぐさま、北川君が表に出てきて釣竿を振りかぶって美汐を・・・って、やっぱり吊り上げるのね・・・。
何て思ってたら、横からもう一本の釣竿が。
そっちの方を見ると、南とつむぎちゃんが二人掛かりで釣竿を操って、こっちはあゆを吊り上げていた。
・・・こ、この二人もなのね。
二人が溺れて緊迫した状況であるはずなのに、私は何だか急に脱力した。



吊り上げられた二人は、幸いほとんど水を飲んでいなかった。
ほっ・・・どうやら大事には至らなかったみたいね。

「うぐぅ・・・棄権になっちゃったよ・・・」
「・・・そんな酷な事はないでしょう」

二人がそんな事を呟いているのが、それほど大した事無かった証拠かな?
さて・・・これで残ったのは4人になっちゃったわね。



再び、前方の名雪達の方へ視線を戻す。
相変わらず名雪がTOPを行き、その後ろを香里と舞と佐祐理さんが追っている。
このままのペースで行ければ、名雪の勝ちかな・・・?
と・・・突然、名雪の泳ぐスピードが落ちた。
それも一気にがくんと。
と言うか、動いてないような・・・?
そして、その横を香里・・・そして舞と佐祐理さんが追い抜いていく。
ちょ、ちょっと!

「名雪! 一体どうしたのよ?!」
「・・・・・・・」

返事はない、ただの屍のよう・・・じゃなくて!

「名雪! 名雪ってば!!」
「う~・・・」

何回か呼びかけていると、反応があった。
ゆっくりと顔を上げる名雪。

「名雪? 何があったの?」
「けろぴ~・・・」
「は?」

突然聞こえてきた予想外のセリフに、思わず唖然とする。

ま、まさか・・・。

私は身を乗り出して、名雪の顔を覗き込んだ。
果たして、名雪の目は線になっていた。
って、

「名雪! こんなところで寝るんじゃないわよ!!」
「うにゅ?・・・祐子ちゃん、おはようございます・・・」
「おはようじゃなくて・・・今、レースの途中でしょ?! 起きなさいってば!!」
「う~、眠いよ~・・・もう起きてられないよ・・・くー」

そう言うと、名雪は海面に突っ伏して寝息を立て始めた。
って、溺れるわよ名雪・・・。

「どうする、相沢。水瀬さん、リタイアにするか?」

そう言いながら、釣竿を用意する北川君。
冗談じゃないわ。
ここで名雪に棄権されたら、間違いなく香里の毒牙の餌食になっちゃうじゃない。
何とかして泳がせないと・・・。

「あ、良いこと考えた♪」

そう言うと、私はどこからともなくざる一杯の海栗を取り出した。

「って、相沢。今、どこから出した?」
「細かい事は気にしちゃ駄目よ、北川君?」
「・・・ま、良いけどな。栞ちゃんの重箱弁当の方がよっぽど不思議だし」

あら、よく分かってるわね、北川君。

「で、その大量の海栗何に使うんだ?」
「これ? もちろん名雪を起こすのに使うのよ。多分これを使えば一発で目が覚めるわね♪」
「・・・どうするんだ?」
「ふふふ、こうするの」

そう言って、私は名雪のちょうど背中の上辺りでざるを逆さにして、名雪の上に海栗を落とした。

グサグサグサ。

そんな擬音が聞こえて、名雪の背中が針山になる。

「だおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~!!!!!!!!!」

それと同時に飛び上がるように(いや、実際に飛び上がったけど)起きた名雪は、悲鳴を上げて猛スピードで泳いでいった。

「ほら、一発だったでしょ?」
「あのな相沢・・・日焼けして真っ赤になった背中にあんなのもの落とされたら、誰だってあぁなると思うぞ・・・」

北川君が、後頭部に大きな汗マークを浮かべてそう言った。

「そんな事は良いのよ。とにかく、香里が勝つのさえ防いでくれれば」
「お前、鬼だ・・・」

失礼ね、北川君。




私は、再び泳ぎ始めた名雪を目で追う。
日焼けした背中に海栗を食らった名雪は、スピードを緩めずに突っ込んで行った。
やがて、前方に香里達の姿が見えた。
香里達も気付いたのか、後ろを振り返り・・・あ、驚いた。

「な、何よあれ? 名雪?」
「あははー、物凄い勢いで突っ込んで来ますねー」
「佐祐理・・・呑気に笑ってる場合じゃない・・・」

何て事を3人が言ってる間にも、名雪はどんどん迫っていく。

「だおっ!だおっ!だおおおおぉぉぉぉぉ~~~~~!!!!」
「な、名雪、あなた一体何が・・・きゃあっ!」
「きゃっ!」
「・・・・・!?」

・・・・そして、3人は名雪によって吹っ飛ばされた。


運が良かったのか悪かったのか、3人はちょうどクルーザーの上に落っこちてきた。

「あいたたた・・・もう、名雪ったら・・・・あら?」

香里がキョロキョロと周りを見回す。
同じように、舞と佐祐理さんもキョロキョロしている。

「ねぇ、祐子・・・ここってクルーザーの上?」
「そうよ。つまりあなた達はこれでリタイアって事」
「そ、そんな! 納得いかないわ!!」
「・・・これで終わり?」
「ふぇ、佐祐理もですか?」

佐祐理さんもです。
って言うか、一人だけ贔屓するわけにも行かないでしょ。

「何と言おうと、リタイアよ」
「そんな~・・・・」

香里はがっくりと項垂れた。
・・・これで助かったわね。


「なぁ、相沢。水瀬さんなんだけど・・・」
「え? 名雪がどうかした?」

北川君に言われて、名雪の方を見てみる。
あら? あそこの砂浜で倒れてるのが名雪かしら?
砂浜に立てられたゴールの枠を通らないと、ゴールにならないんだけど・・・。

「水瀬さん、さっきの勢いで泳いでったんだけど、そのまま砂浜に突っ込んで・・・動かなくなっちまったんだが・・・」
「・・・また寝てるのかしら? しょうがないわね、名雪ったら・・・」
「違うと思うぞ・・・」

何か小声でぼそぼそとしゃべっている北川君。
言いたい事があるなら、はっきり言おうね?
ま、別に良いけど。

さて、これじゃあ名雪もリタイアかな。
結局、全員リタイアと言う事でこのレースは終わり・・・。

「えぅ~、待ってください~」
「え?」

突然聞こえた声に振り返ると、栞がまだ泳いでいた。
そう言えば、すっかり忘れてたわ・・・。

「栞ー。別に無理に泳がなくても良いのよー!」

私はそう言うけど、

「大丈夫です! 例えどんなに時間が掛かっても最後まで泳ぎきってみせますー!」

栞は頑として聞かなかった。
しょうがないわね・・・ま、そのうち諦めるでしょう。
私は、最後まで見守る事に決めた。





そして、栞はそれから6時間かけてゴールにたどり着いた。
最後まで泳いだ根性は認めるけど・・・付き合うこっちの身にもなってほしいわ・・・。






「や、やりました! これで1日祐子さんは私の物・・・」
「栞、言い忘れてたけど勝者に与えられるのは、今日1日好きな人自由にできる権利よ?」
「きょ、今日1日?! って、もうあと3時間ぐらいしかないじゃないですか!」
「そうね。それに祐子、今日はもう疲れたからって言って、とっととシャワー浴びて寝ちゃったわよ?」
「そ、そんな?!」
「そう言うわけだから・・・あたしも疲れたから、先に寝るわ。お休み栞」
「えぅ! そ、そんなお姉ちゃん!!」
「・・・・・す~」








「な、納得いかないです~~~~!!!!」







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