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過去の遺作置き場
2017年12月13日 (Wed)
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2002年09月22日 (Sun)
それはある日の昼休み。
俺たち美坂チームが、いつも通り4人で昼食を学食で食っている時だった。

「ところで相沢君に名雪。今度の日曜、何時に待ち合わせする?」
「・・・日曜?」

はて、何かあったっけな?
香里の言葉に俺は首を傾げる。
名雪の方を見てみると、向こうも俺の方に顔を向けていて目が合った瞬間に首をフルフルと横に振っていた。
どうやら名雪も分からないらしい。
そんな俺たちの様子を見ていた香里は、手元にあったジュースを一口飲んでから小さくため息を吐く。
何と言うか・・・呆れているようだ。

「何だお前ら、こないだ約束したばかりなのにもう忘れたのかよ」

そんな俺達に、横からツッコんでくる北川。
ぐっ、北川にそこまで言われるとは・・・。
しかし、忘れちまったもんはしょうがないだろ。

「ホント、しょうがないわね」
「って、香里。人の思考を読むな」
「相沢、口に出してたぞ」
「・・・マジか、北川?」
「あぁ、はっきりとな」

・・・いつもの事ながら、俺のこのクセはどうにかならないものだろうか?
でないと、この先非常にヤバイ気がするのだが・・・。

「いやまぁ、それはともかく。で、何の話だったっけ?」
「だから、今度の日曜にみんなでお花見に行くことになってたでしょ?」

花見?
花見・・・・あ。

「・・・おお、そう言えばそうだった」

ポン、と手を叩いてみる。
そう言えば、今度皆で花見に行こうって秋子さんが企画したんだっけ。
すっかり忘れてた。
見ると、北川と香里が同時に溜息を吐いている。

「・・・栞ってばもうずっと前から楽しみにしてたのよ? これで相沢君が忘れてたなんて聞いたら何て言うかしらね・・・」

呆れた顔でそう言う香里。
そうだな・・・栞の事だから、『そんな事言う人嫌いですっ!』とか言うだろうな。
それで、罰としてアイスを奢らされるんだろう。
・・・2リットルほど。
むぅ・・・それだけは勘弁してほしいぞ。
今月は既にピンチなのだ。
まだ月の中頃だと言うのに・・・。
それもこれも、所構わずたかってくる名雪達の・・・。

「相沢君?」
「・・・は?! いや、何でもないぞ」

突然黙り込んでしまった俺に向かって訝しげな目を向ける香里。
いかんいかん、つい思考の海へと沈んでしまった。

「それで、相沢。待ち合わせの時間どうするんだ?」
「そうだなぁ・・・やっぱり、早めに行った方が良いだろうな。花見の場所取りもしなきゃならないだろうし・・・」

俺は、顎に手を当てて考え込む。
でも、よく考えたら場所は秋子さんが何とかしてくれるって言ってたような気がするな。
とすると、それほど急がなくても良いか・・・。
などと考えていると、

「へー、みんなでお花見行くんだー。いいなぁ」
「へっ?」

と、突然後ろから声をかけられた。
誰かと思って振り向くと、そこには真琴先生の姿が。
手に持っているトレイに乗っている器から判断して麺類を食べていたらしい。

って、

「ホントに学食使ってたんですね・・・」
「うん、せっかくだからね」

と、ニッコリと微笑みながら言う先生。
そんな先生の笑顔に思わず見とれる。
・・・なんか、真琴先生って綺麗っていうよりは可愛いって感じなんだよな。

「やだもう、祐一君ってば。褒めても何も出ないわよ?」
「え?」

・・・どうやら、また口に出ていたらしい。
ホント、誰かどうにかしてください。

「え、えーと。せ、先生も一緒にやります? 花見」

とっさに話題をすりかえようと頑張ってみる。
い、いや、何だか周りの視線が痛いんだよ・・・。

「え? でも私が行ってもいいのかな?」
「問題ないと思いますよ。企画したの秋子さんですから、1秒で『了承』されると思います」
「・・・そうかも」

そう言って先生はクスッと笑い声を上げる。
どうやらこの間泊まった時に秋子さんがどんな人なのかは理解したらしい。

「それじゃあお言葉に甘えようかな。今度の日曜日だよね?」
「はい」

それから、俺と香里と先生で打ち合わせをしていると午後の授業の予鈴が鳴った。
それを合図にして、俺たちは先生に軽く挨拶をしてから教室に戻った。


「う~・・・」

その間中、何故か名雪は唸りっぱなしだったけど。
どうしたんだろうな、一体?
気になるけど・・・俺はあえて気にしない事にした。





         ◆ ◆ ◆ ◆






「了承」


俺が全てを言い終わるか終わらないかの内に、秋子さんはいつもの口許に指をあてるポーズでそう言った。
俺は、家に帰ると同時に早速秋子さんに真琴先生の事を伝えたのだが・・・。
結果はこの通りだ。
1秒どころか、0.1秒だったな・・・。
分かっていた事とは言え・・・もうちょっと考える仕種とか見せてほしいな~なんて思ったり。


「それでは、お花見のメンバーは全部で10人になりますね」
「そうですね」

秋子さんが言う10人とは、俺、名雪、真琴、あゆ、秋子さん、香里、栞、北川、天野、そして真琴先生だ。
佐祐理さんと舞も誘ったんだが、二人とも用事で来れないそうだ。
舞、凄く残念そうだったな。
今度、埋め合わせに3人でどこか行くか・・・。

「あ、ところで秋子さん。集合時間、一応10時にしたんですけど・・・場所取りとかしなくて良いんですか?」
「その辺は心配しなくても大丈夫ですよ。ちゃんと私が用意しておきましたから」

そう言いながら、秋子さんは微笑んだ。
まぁ、秋子さんがそう言うなら大丈夫だろうな。

「それじゃ、10時に駅前集合・・・で良いんですよね?」
「えぇ、大丈夫ですよ。ふふ、楽しみですね」

秋子さんは、いつものポーズを崩さずにそう言って笑う。
俺はその後、二三程度秋子さんと話をして自分の部屋へと戻った。





         ◆ ◆ ◆ ◆






その日の夜―――。


「あれ? 祐一、今からどこか行くの?」
「あぁ。ちょっと夜の散歩にな」

俺は、上着に袖を通しながら後ろから声をかけてきた名雪にそう答える。
いくら春になったとは言え、まだ夜は寒いからな・・・。

「珍しいね、祐一。夜の散歩だなんて」
「たまには、そう言う気分になる時もあるのさ。じゃあな、名雪」
「あ、うん。行ってらっしゃい」

名雪に見送られつつ、俺は家を後にした。
しかし・・・名雪の事だから、てっきり『私も行くよ』とか言ってついてくるかと思ったけど意外とあっけなかったな・・・。



しかし、俺のそんな考えは浅はかだった。

「皆、祐一を追うよ」
「うぐぅ・・・祐一君どこ行くんだろう?」
「あうー、逢引とかだったら許さないんだから!」

そんな事を言いながら、後ろからついてくる3人娘に気付いていなかったのだから・・・。








別に何か目的があって家を出たわけではないので、ゆっくりと周りの景色を眺めながら夜道を歩く。
いつも学校へ行くときは、こんなにゆっくり周りを眺めてなんかられないからな。
それに、夜の景色って言うのも何だか新鮮だ。
たまには、夜の散歩って言うのも良いもんだよな。
時間を見つけて、時々こうやって散歩しようかな・・・。

「あら、祐一君じゃない」
「え?」

突然の声に振り向くと、そこには真琴先生が立っていた。
俺の方を見つめながら、優しく微笑んでいる。
思わず、見とれてしまった。

「どうしたの、こんな時間に」

そう言いながら、真琴先生は俺の隣へと歩いてくる。

「いえ、ちょっと散歩ですけど・・・先生こそ、どうしたんですか?」

隣へと来た真琴先生と並んで歩きながら、俺はそう答えた。

「私も散歩よ。あんまり月明かりが綺麗だったから、何となくね」
「月・・・ですか」

俺は、空を見上げた。
確かに、綺麗な月が夜空に映えて綺麗で・・・そして、どこか幻想的な雰囲気をかもし出している。

「・・・ホントですね」

俺は、真琴先生の方に視線を戻してそう言った。

「そうでしょ? ふふ」

真琴先生は、何故か嬉しそうに微笑んだ。




しばらくそうやって二人で歩いていると、やがて公園にたどり着いた。
公園には桜並木の通りがあり、風で散った花びらが道にこぼれている。

「うわぁ・・・綺麗ねぇ・・・」

真琴先生が、月明かりに照らされた夜桜を眺めながら感嘆の声を上げた。
俺も同じように桜を見上げる。
・・・確かに、思わず溜息が出てしまいそうなほど綺麗だった。

「ねぇ、祐一君。今度の日曜日の花見もここでやるのかな?」
「さぁ・・・でも、駅前集合って事になってますし違うんじゃないですか?」
「そうなの?」
「多分・・・ですけど」

俺は自信無さ気に答える。
この桜並木は夜こそ静かだが、昼間は花見客で一杯になる。
で、ここに花見に来る見物人達はマナーが悪いのだ。
秋子さんの事だから、そう言う所を花見の場所に選らんだりはしないだろう。
それに、もしここで花見するなら駅前に集合する必要ないもんな・・・。

「そっか」

それでも真琴先生は納得したのか、それ以上何も聞かずに再び桜を眺め始めた。
一瞬、少し強い風が吹いて『ザァッ』と桜の花びらが舞い散った。
舞い散る花びらの量が増えて、一面の桜吹雪となる。
そんな桜吹雪の中にたたずむ真琴先生は・・・月明かりに照らされて綺麗で、思わず俺はその光景に見惚れた。

「ん? どうしたの祐一君?」

そんな俺の様子を不振に思って、真琴先生が声をかけてくる。
俺はハッと我に返ると、

「い、いえ、何でもないです」

そう言って、誤魔化した。

「そう? なら良いんだけど」

特に俺の様子は気に留めず、真琴先生は笑った。




「ね、日曜日のお花見・・・楽しみだね」

公園を後にして、二人で並んで歩きながら家へと戻る途中・・・真琴先生はそう言った。

「・・・そうですね」

俺が笑ってそう返すと、真琴先生もニコリと微笑んだ。
そんな真琴先生に見惚れながら、俺は日曜日の花見に思いを馳せる。

ホント・・・楽しみだな・・・。
そう、心の中で繰り返しながら。

















「うぐぅ・・・祐一君、真琴先生と一緒に散歩してるよ・・・」
「あうー、やっぱり逢引だったのね! 許さないんだからぁ!!」
「祐一、明日の朝はお母さんのジャムで悶絶させてやるおー」








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