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過去の遺作置き場
2024年03月29日 (Fri)
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2002年09月09日 (Mon)
7月24日



今日は、昨日の約束どおり香里の家へ。
『ゆういち』の詳しい事・・・・何が何でも教えてもらわないと。
そう思いながら、私は美坂家の門を叩いた。

「はい、どちら様・・・・あれ? 祐子さん、急にどうしたんですか?」

対応に出てきた栞が、私の顔を見て不思議そうな顔をする。
まぁ、私がこの家に来るなんて事滅多にないから無理もないけど。

「こんにちは、栞。香里居る?」
「お姉ちゃんですか? 居ますよ。今、呼んできますね」
「その必要はないわよ」
「「え?」」

突然聞こえた声の方・・・・栞の後ろに視線を向けると、そこには香里が立っていた。

「お姉ちゃん。いつの間に降りてきたんですか?」
「今さっきよ。チャイムの音が聞こえたから、多分祐子だろうと思って降りてきたのよ」

そう言うと、香里はずずいと私の前に出てきて、

「それじゃ、あたしの部屋まで案内するから一緒に来てくれる?」

そう言って、私の手を取った。
あ、でも・・・・。

「香里、ちょっと待って」
「何?」

そう言いながらも、香里は歩を緩めずに私をどんどん引っ張っていく。
待ってって言ったら、止まって欲しいんだけど・・・・。

「あのね、香里」
「うん?」
「・・・・私、まだ土足なんだけど」
「「へ?」」

その言葉を聞いて、香里と後ろからついてきていた栞が私の足元に目をやった。
私の足にはまだ靴が履かれていて、その後ろには土足で歩いた証である足跡が残っている。

「とりあえず、脱いできて良い?」
「・・・・そうして」

香里が頭を抱えながらそう言った。

「えぅ~、もしかしてこれ掃除するの私ですか?!」

・・・・ごめんね、栞。






「へ~、これが香里の部屋なんだ」

私は、案内された部屋に入って一通り見回してからそう呟いた。
記憶を失くした後、入った事のある女の子の部屋って名雪、真琴、あゆの部屋ぐらいだもんね。
それ以外の人の部屋を見るのは初めてだわ。

「あたしは、何か飲み物でも取ってくるから・・・・祐子はしばらく寛いでて」
「うん、分かった」

そう言うと、香里は部屋から出て行った。
私は傍に置いてあるベッドに腰掛けると、改めて部屋を見回す。

「何て言うか・・・・香里らしいって言えば、らしい部屋よね」

名雪みたいに、ぬいぐるみと目覚ましで部屋の4分の3が埋まってるわけでもないし、真琴みたいに家具がまったくなくて漫画ばっかり置いてあると言うわけでもない。
・・・・あの二人は、特殊か。
ま、まぁとにかく普通の女の子の部屋だと思う。
こう言うことを香里に言うと、『何を期待してたのよ』とか言われそうだけど。

何気に本棚を眺めていると、参考書とかの中に紛れて一冊のアルバムを見つけた。
う~ん・・・・勝手に見たら悪いかしら?
でも、見てみたい気もするし・・・・。
・・・・良っか、見てみよっと。
香里が来たら何か良いわけすれば良いだけよね。
そう自分に言いながら、私はそのアルバムを手に取った。

「どれどれ、どんな写真があるのかしら?」

わくわくしながら、最初のページをめくる。
そこには名雪、香里、栞、真琴、あゆ、舞、佐祐理さん、美汐、北川君が写っていた。
皆制服を着てるし、後ろに校舎が見えるところから判断すると学校で撮ったのかしら?
それにしても、こう言う全員集合の絵って何か珍しいわね~。
特に、舞と佐祐理さんはもう卒業してるから制服姿で皆と一緒に居る事なんてほとんどないもんね。
ある意味、貴重かも。
そんな事を思いながら、感慨深げに写真を眺めていると一人の男の子が眼に入った。

・・・・見た事のない男の子。

パッと見た感じ、中世的な顔立ちで女の子受けしそう・・・・そう思った。
よく見てみれば、皆その男の子に少しでも近づくようにして写っている。
おかげで、北川君が少し寂しげだけど。
特に名雪なんか、隣でさりげなく腕なんか組んでる。
嬉しそうな顔して・・・・。
そこで、私はハッとした。
もしかして、この男の子が名雪の言っていた『ゆういち』君なの・・・・?

「お待たせ、祐子・・・・って、ちょっと何勝手にアルバム見てるのよ!」
「あ、香里」

そう言うと、香里は神速の如き速さで私の手からアルバムを奪い取った。
何か見られたら困るような写真でもあったのかしら?

「祐子、どれだけ見たの・・・・?」
「まだ最初の一枚だけよ。あの全員集合してるやつ」
「あぁ・・・・って、あれ見たの?!」

明らかに動揺する香里。
どうして、あの写真でそこまで動揺するの?
一緒に写っていた男の子(多分『ゆういち』)を見られたから?

「ねぇ香里、教えて。あの写真に一緒に写っていた男の子・・・・あれが『ゆういち』君なのね?」

私の言葉を聞いて、「ハァ」と溜息を吐く香里。
そして何か諦めたような表情をして、

「・・・・そうよ。あの写真の真ん中に一緒に写ってたのが『相沢祐一』君。あなたが教えて欲しいって言ってた相手よ」
「やっぱり、そうだったんだ・・・・」

私は改めて、さっきの写真を思い出した。
皆に囲まれて複雑な顔をしてる『ゆういち』君。
何故か・・・・私は、その『ゆういち』君に親しみのようなものを覚えた。
そしてそれと同時に・・・・。

「ね、香里。その『ゆういち』君ってさ、その写真を見た限りでは結構格好良い感じよね?」
「え、えぇ?!」

何故か、盛大に驚く香里。
私はそんな香里の様子を気にも止めず、さっきの写真の顔を思い浮かべる。
この気持ちって・・・・まさか、ね。




会った事も話した事もない相手・・・・写真を見ただけの男の子に私が・・・・。




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