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過去の遺作置き場
2024年04月26日 (Fri)
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2002年09月11日 (Wed)
7月26日



「ただいま~」
「お帰り名雪。ちょっと聞きたい事が・・・・って香里?」

その日、部活から帰ってきて名雪を出迎えると、何故か香里が隣に立っていた。

「こんにちは、祐子。お邪魔するわね」
「帰る途中で出会ったから、家に誘ったんだよ~」

帰る途中ね・・・・香里は、夏期講習の帰りかしら?
ま、どっちにしろ都合は良いわね。

「そう、それじゃ丁度良いわ。ちょっと話したい事があるから・・・・そうね、二人とも後で私の部屋に来てくれる?」
「「話したいこと?」」
「えぇ、とっても重要な事なの。名雪が着替えた後で良いから、必ず部屋に来てね」

そう言うと、私は自分の部屋へと戻った。
名雪と香里は、不思議そうにお互いに顔を見合わせていた。

コンコン。

自分の部屋でベッドに腰掛けて待っていると、ノックの音が聞こえた。

「祐子ちゃん、来たよ~」
「お待たせ」

そう言いながら、部屋に入ってくる二人。

「ごめんね、二人とも。でもどうしても聞いておきたい事があるの」

二人を適当な所に座らせながら、私はそう切り出した。

「別に良いよ~」
「えぇ、あんまり気にしなくて良いわ。それで?」
「二人とも正直に答えてほしいの。もしかしたら、私の記憶を取り戻す手がかりになるかも知れないから」

私は真面目な顔をしてそう言った。
それを見て、香里は少し険しい顔をして私の次の言葉を待ってる。
・・・・心当たりがあるからかしらね。
一方の名雪は、よく分かってない顔でにこやかに「何だろう?」って感じで私を見てるけど。

「あの『ゆういち』君の事なんだけどね・・・・どうして、苗字が私と一緒なの?」

ビシッ。

一瞬、そんな音と共に二人は凍りついた。
さっきまで笑っていた名雪も、驚愕の表情を浮かべてる。
二人とも、何か知ってるのね。

「ねぇ、教えて。私どうしても気になって仕方ないの」

「・・・・う~、祐子ちゃんに苗字教えたの誰?」
「ごめん、あたしかも知れないわ・・・・」
「か、香里~・・・・」


「二人とも、人の目の前でひそひそ話は良くないわよ?」
「べ、別にひそひそ話なんてしてないよ~」
「そ、そうよ。別に何でもないわ」

ビクッとしておどおどし始める二人。
あきらかに怪しいわね~。

「・・・・まぁ、良いわ。それで、どう言う事なの?」
「え、え~と・・・・その、つまり祐一は・・・・」
「何?」
「あ、相沢君はね・・・・その・・・・」
「うん?」

わたわたして、言葉を濁す二人に有無を言わさぬプレッシャーをかける私。
どう言うつもりなのかは知らないけど、私は自分の記憶の手がかり掴めるかも知れない数少ない機会。
何としても話してもらわないと。

「名雪? 香里?」
「う~・・・・」

そう唸っていた名雪が、諦めたかのように溜息を吐いた。
ようやく話してくれるのかしら。

「祐子ちゃん、よく聞いてね? 祐一は・・・・」
「相沢君は、あなたの双子の兄よ」
「え?!」
「か、香里?」

何かを言いかけた名雪を遮って、香里はハッキリとした口調でそう言った。
双子の兄?・・・・『ゆういち』君が?

「それ、本当なの・・・・?」
「えぇ、そうよ。でも二人は色んな事情で一緒に居る事が少なかったって聞いてるけど」

そっか・・・・。
一緒に居る事が少ないなら、顔見ただけで記憶が戻らなくても仕方ないわね・・・・。

あれ?
でも・・・・。

「ねぇ、香里。双子って普通男と女って同時に生まれないんじゃない?」
「それは一卵性双生児の場合でしょ? 祐子は二卵性のはずだから、問題ないはずだわ」
「そう・・・・」

ちょっとは期待したんだけどな。
実は血の繋がらない兄妹とか。
そんなドラマみたいな話あるわけないか。
でも、記憶喪失ってだけで充分ドラマみたいだから、少しは期待しても良いようなものだけどねぇ?
あ、でもでも兄と妹の禁断の燃える恋って言うのも・・・・。

「・・・・子ちゃん、祐子ちゃん!」
「・・・・え?! あ、ど、どうしたの名雪?」
「どうしたのじゃないよ~。急に遠くを見つめて黙っちゃうんだもん、どうしたのかと思ったよ」
「あ、ご、ごめんね名雪」

湧き上がる動揺を抑えつつ、そう答える。
まさか、兄相手に妄想を浮かべてたなんて言えないし(汗)
でも、『ゆういち』・・・・写真見る限りでは、結構格好良かったのよね~。

「・・・・・・・(じ~っ)」

う・・・・。

「な、何? 香里」
「・・・・別になんでもないわ」

そう言いながらも、香里の疑惑の眼差しは止まらない。
香里は、一昨日にも私がトリップしてたの見てるからなぁ(汗)
疑われてるのかも。

「と、とにかく二人とも話してくれてありがと。おかげですっきりしたわ」
「うぅん、これぐらいなんて事ないよ~」
「でも、記憶の手がかりにはならなかったみたいね」
「ま、それはしょうがないわ。でも何で二人ともずっと黙ってたの? 私の記憶取り戻すなら、少しでも可能性のある事はすぐ話してほしいんだけど」
「あ、そ、それは・・・・」
「・・・・まぁ、良いわ。でもこれからは、少しは手がかりになりそうな事はすぐ話してね?」
「う、うん、分かったよ」
「それじゃ、あたしはそろそろ帰るわね」

そう言って、香里が立ち上がる。

「あ、じゃあ玄関まで見送るよ」

それを追いかけるように名雪も立ち上がって、香里の後を追っていった。

「それじゃ祐子、また今度ね」
「うん、またね香里」

部屋を出て行く香里に向かって手を振る。
名雪も出て行ってドアが閉められると、私はベッドに倒れこんだ。

「ふぅ・・・・」

そんな溜息が自然とこぼれる。
双子の兄か・・・・。
確かに、私とよく似てるとは思うけど・・・・まさか血が繋がってるとは思わなかったな。
あ~あ、残念。
・・・・それにしても、『ゆういち』ってどこに行ったのかしらね?
それも聞けば良かったな・・・・。















一方―――。

「ねぇ、香里」
「何?」
「あんな事言っちゃって・・・・良かったの?」
「あんな事って・・・・相沢君の事を、双子の兄って言った事?」
「うん」
「でも、あそこはあぁ言うしかなかったでしょ。まさか祐子にあなたの事よなんて言ってもパニック起こすだけだと思うもの」
「それは・・・・そうかも」
「だから今はあれで良いのよ。それに・・・・」
「それに?」
「あたしの勘だと祐子、相沢君に惚れかけてたわよ?」
「え?! で、でも自分なのに・・・・」
「祐子自身はそう思ってないもの。だから、兄妹って言っておいた方が安全なのよ」
「そっか。でも、あのまま勘違いしたままだったらどうしよう?」
「・・・・記憶が戻れば大丈夫よ」
「そうだね・・・・」




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