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過去の遺作置き場
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2002年08月31日 (Sat)
「さてと・・・・HRも終わったし帰るか・・・・」

誰に言うでもなくそう呟くと、俺は何も入っていない空の薄い鞄を手に持って立ち上がる。

「あ~、ちょっと待て相沢」
「え?」

帰ろうと自分の席を離れようとした時に、石橋に呼び止められる。
はて、俺何かやったっけか?
そんな事を考えながら、俺は石橋と真琴先生の元に向かう。

「何ですか?」
「うむ、お前今から暇か?」
「へ?いやまぁ、暇って言えば暇ですけど・・・・」

俺は部活とかやってないから、放課後になれば基本的に暇だ。
北川から何か誘いがあれば別だが・・・・今日はそれもない。
つまり、今日は暇だと言う事だ。

「そうか、丁度良い。それじゃあ悪いんだが、沢渡先生を連れて学校の中を案内してやってくれないか」
「・・・・何で俺なんです?」
「沢渡先生がそう言ったからなんだが・・・・」
「へ?」

思わず俺は真琴先生の方を見る。
真琴先生は、にっこりと笑って俺に笑顔を向けた。

・・・・可愛い。

じゃなくて!
俺は、ブンブンと振り払うように頭を振る。

「「・・・・どうした(の)?」」

真琴先生と石橋が同時に声を合わせて不思議そうな顔で俺を眺める。

「あ、いや・・・・何でもないです、何でも」

ははは・・・・と乾いた笑いを返しつつ、俺は話を元に戻した。

「でも、案内たってどこを案内すれば良いんですか?」
「なに、食堂とか特別教室とかの場所を案内してさえくれれば良い。後、細かい所は追々覚えてくれれば良いしな」
「はぁ・・・・」
「それじゃあ相沢、後は頼んだぞ」
「え!あ、ちょっと!!」

しかし、石橋は何か言おうとする俺を無視してさっさと教室から出て行ってしまった。
・・・・俺、まだ承諾したわけじゃないんだが。
ふと真琴先生の方を見ると、

「それじゃあ、宜しくね。祐一君」

そう言って、首を傾げ軽く笑った。


・・・・ま、良いか。

そう考えると、俺は真琴先生と連れ立って学校を案内するべく教室を後にした。


「う~・・・・祐一・・・・」


後から刺さる、ちょっと不満そうな従妹の視線にも気付かずに。







         ◆ ◆ ◆ ◆






とりあえず廊下に出た俺達。
でも、最初にどこ行こう?

「真琴先生、どこから見て回りたいですか?」

自分で勝手に決めるのもアレなので、すぐ隣に居る先生にそう問いかける。

「そうね・・・・それじゃあ、やっぱりまずは食堂かな?」

嬉しそうにそう答える先生。
まぁ、食堂はもっとも大事な場所とも言えるしな。

「それじゃあ行きましょうか、真琴先生」
「えぇ」

先生は頷くと、俺の後について食堂へと向かった。




「さ、ここが食堂です」
「へ~・・・・綺麗な食堂ね。それに結構広いし」
「実際のところそんなに広くないですよ。昼休みに出遅れると間違いなく席取れませんから」
「あ、そうなんだ?じゃあ、昼休みになったらダッシュで来ないとね」
「そうですね・・・・あれ?でもここって学生食堂だから・・・・先生って使えるのかな?」
「え、使えないの?」
「う~ん・・・・別に教師が使っちゃいけないって事はないと思うけど・・・・」

しかし、この食堂で教師がお昼を食べている姿はハッキリ言って見た事がない。
ただ単に、混雑した食堂で食べたくないだけなのかも知れないが・・・・。

「じゃあ、別に使っても良いわよね。うふふ・・・・私、食堂って好きなんだ」

そう言う先生は、どこか楽しそうだ。
何て言うか・・・・先生じゃなくて、同じ高校生みたいな感じだな。
子供っぽいってわけじゃないんだけど・・・・何か、どこか可愛いとこがあると言うか。
そんな真琴先生を見ていて、俺は何となく嬉しくなった。

「・・・・どうしたの?急ににやにやしちゃって」
「え?うわっ!」

気が付くと、いつの間にか真琴先生が俺に顔を近づけて覗き込んでいた。
いきなり目の前に真琴先生の顔が現れたから、正直かなり驚いた・・・・。

「おどかさないでくださいよ・・・・」
「ごめんごめん。でも急に押し黙っちゃってにやにやし始めるから、どうしたのかと思っちゃって」
「・・・・俺、そんなににやにやしてました?」
「うん」

ぐはっ、どうやら顔に出ていたらしい。
気を付けないと・・・・。

「と、とりあえず食堂はもう良いでしょう?次行きましょう、次!」
「そうね、じゃあ次は実験室の方お願いね♪」

俺は、その場をごまかす為にここを後にする事にした。
とりあえず、希望通り化学実験室へと向かうか。

俺は真琴先生を連れて食堂を後にすると、特別教室棟へと向かった。








「ここが、化学実験室ですけど・・・・どうして、ここなんです?」

確か、真琴先生は国語教師のはず・・・・化学室とは何の縁もなさそうだが。

「私、一応化学の授業の代理も頼まれてるから。もし化学の先生がお休みとかしたら、私が授業をするのよ」

・・・・普通、国語と化学(つまり文系と理系)を代理とは言え一緒にするか?

「まぁ、学校側にそう頼まれたら断れないしね」

少しは考えろよ、学校側も。
まぁ、真琴先生が自分で納得してるなら別に良いんだけど。

「本当は私文系だったから、あんまり教える自信ないんだけどね」

そう言いながら、真琴先生はペロッと舌を出す。
・・・・やっぱり、問題なような気がする。


「あれ?」
「どうしました?」
「ねぇ・・・・あそこの一角だけ、何か変なんだけど」

そう言って真琴先生の指差した先は・・・・確かに、あちこち板が打ち付けてあったりして、まるで緊急補修したような後である。

「何かあったの?」
「う~ん、別に特には・・・・あ」

俺は一つだけ思い当たる節があったのを思い出した。

「そう言えば今日の朝、何か爆発音があったな・・・・これだったのか」
「爆発音?」

不思議そうな顔で聞き返す真琴先生。
まぁ、当たり前の反応だが。

「・・・・何だか物騒ね」
「あ~、その・・・・ある一生徒によって日常的に起きてる事なんで、あんまり気にしないでください」
「日常的にって・・・・それも問題じゃないの?」
「・・・・気にしたら駄目です」

いまいち納得行っていない真琴先生だが、それ以上は突っ込んで来なかった。
まぁ、この学校に居ればいずれ嫌でも分かる事だし・・・・。
今、無理に言う必要はないだろ。


「それじゃ、ここはもう良いでしょう。次は・・・・」
「あ~、祐一君。これ以上はまた明日にしない?」
「明日?何でまた・・・・」

別に時間的余裕もまだあるし、このまま今日中に周ってしまった方が良いと思うのだが・・・・。

「何となく、そう言う気分なの。ね?だから続きはあ・し・た」

・・・・まぁ、先生がそこまで言うなら別に良いんだけどさ。

「分かりました。じゃあ、ここで解散で・・・・」
「えぇ、それじゃあまた明日ね、祐一君」

そう言って、真琴先生は職員室の方へと走って行ってしまった。
・・・・帰るか。
俺はくるりと向きを変えると、置いてきた鞄を取りに行くため教室へと向かった。







         ● ● ● ●






「くそ、少し遅くなっちまった・・・・」

愚痴りながら、下駄箱から靴を取り出す。
教室に戻った時、まだ残っていたクラスメートに色々と冷やかされたのだ。
それで、そいつらが中々帰してくれなかったので、遅くなったというわけだ。
まぁ、ちょっとだけだから別に良いけど。
どうせ、急いで帰る用事なんかないし。
せっかくだから商店街でも寄って帰ろうかな~・・・・。

「あら?祐一君まだ居たの?」

・・・・なんて事を考えていたら、ちょうど帰る所だった真琴先生と鉢合わせた。
てっきり、もう先に帰ってるもんだと思ったが・・・・。
何してたんだろ?

「ちょっと、教室でクラスメートと話してたもんですから・・・・ところで、真琴先生こそ何で?」
「私、赴任したばかりとは言え教師よ?そんなすぐに帰れるわけないじゃない」
「それもそうか」

よく考えたら、当たり前だな・・・・。
どうも真琴先生を見てると教師って感じがしないから、勘違いしそうになるが。
少し落ち着こう。


「あ、ねぇねぇ。祐一君も今帰る所なんでしょ?」
「えぇ、そうですが?」
「じゃあ、せっかくだから途中まで一緒に帰ろっか。色々と話したい事もあるし」
「まぁ・・・・良いですけど」
「決まりね♪ あ、ところで家どこなの?」
「あ~っと・・・・あっちの方です」
「あ、何だ。じゃあ私と同じ方向じゃない」

そうなのか・・・・えらい偶然だな。
まさか、お隣さんなんて事は・・・・ないな。
よく考えたら、隣の住人はまだ健在じゃないか。
・・・・『じゅうにん』だぞ。
ま、それは置いといてと。

「それじゃあ、せっかくだからうちでお茶でもどうです?」
「あら、良いの?でも迷惑じゃない?」
「全然、問題ないです」

聞くまでもない事である。
多分、聞いても1秒と経たずに了承されると思うし。

「そっか。それじゃお言葉に甘えちゃおっかな」
「どぞどぞ。じゃあ、行きましょうか」
「えぇ」

そんなわけで、俺は真琴先生と連れ立って帰路に着いた。







         ◆ ◆ ◆ ◆






「ただいま~・・・・」

玄関のドアを開けると、わたしは重い息を吐きながら家に入った。
いつもより、『ただいま』の声が気落ちしているのが自分でも分かる。

「おかえりなさい。あら、名雪。今日は一人なの? 祐一さんは?」
「う~・・・・祐一だったら多分まだ学校だよ。今日来た先生に学校の案内を頼まれてたから」

今日は部活休みだったから、せっかく一緒に帰ろうと思ってたに・・・・声かける間もなく、先生と一緒に行っちゃうんだもん。
祐一のバカ・・・・。

「あらあらご機嫌斜めね。もしかしてその先生は女性なのかしら?」
「わ、お母さんどうして分かったの?」
「それも凄い美人ね?」
「お母さん凄いよ~。どうしてそんな事まで分かるの?」
「ふふふ、それは企業秘密よ」

いつものように片手を頬に当てながらお母さんは微笑んだ。
う~、相変わらずお母さんには敵わないよ・・・・。
わたしもいつかお母さんみたくなれるのかなぁ?


「それより、どうして祐一さんに頼んだのかしら? 確か祐一さんはクラス委員ではなかったと思うのだけど」
「それがね、何か祐一の昔の知り合いとかですっごく仲が良いんだよ。祐一はそんな事ないて言ってたけど・・・・」

でも、見る限りではとても赤の他人とは思えないほど仲が良く見えたよ・・・・。
う~、何か悔しいよ~。

・・・・あれ?
そう言えば・・・・。

「あ、ねぇねぇお母さん。その先生なんだけどね。名前が沢渡真琴って言うんだよ。ビックリだよね」
「あら、真琴と同じ名前なのね」

そうなんだよ。
わたしも最初聞いた時、驚いちゃったよ。

「うん。あ、でもね。祐一に凄い偶然だねって言ったら祐一、何て言ったと思う? 『偶然じゃない』だって。どういうことなんだろ?」

それに・・・・そう言った時の祐一、何か妙な表情をしてた・・・・。
なんていうか・・・・口では説明し辛いけど。

「そうねぇ・・・・きっとそれは真琴に関係あるんじゃないかしら?」
「真琴に?」

何だか意味深・・・・。
て言うか、

「お母さん、何か知ってるの?」
「うぅん・・・・知ってると言うか、心当たりみたいなものはあるのよ」
「それって・・・・」
「あう? 真琴のこと呼んだ?」

話を遮るような形で、自分の名前が呼ばれていることに気付いた真琴がリビングから顔を出してきた。
うん、真琴にも話しておかないと・・・・。

「あ、あのね真琴。実は・・・・」

真琴に、今先程までお母さんと話していた事と同じ事を説明しながら、わたしもリビングへと入った。
いつまでも玄関で話してるわけにもいかないし・・・・。



「あう・・・・・真琴がもう一人居るの?」
「うぅん、そうじゃなくて同じ名前なだけなんだけど・・・・真琴は何か心当たり無い?」
「そんな事言われても・・・・」
「「う~ん」」

お母さんの言葉からすると、真琴が何か知ってそうだと思ったんだけど・・・・何も知らないのかな?
う~ん、だとするとどう言う事なのかなぁ。
お母さんが出してくれた紅茶を口に含みながら、二人で腕を組んで考え込んでたら、

ガチャ。

「ただいま~」

ドアの開く音と、遅れて祐一の声が聞こえてきた。
あ、帰ってきたんだ。

「あ、祐一帰ってきた♪」

その声に反応してたたたっと玄関へと向かう真琴。
う~、真琴素早いよ~。
わたしも行こうっと。
飲みかけの紅茶もそのままに、わたしはソファから立ち上がると、真琴の後を追って玄関の方へと向かった。














「ただいま~」

玄関を開けるなりそう言った俺は、後ろについてきている真琴先生の方に振り向く。

「さ、ここが俺が居候している家です。遠慮なく入ってください」
「そう?じゃあ、お邪魔しま~す」

真琴先生が中に入ったのを確認してから、ドアを閉めてまた前を向く・・・・。

「おっかえり~ゆーいち~♪」
「うわっ!」

だ、誰だいきなりダイブしてくるのは!
かなりの勢いのついたその一撃を何とかこらえてその場に踏みとどまると、そのダイブしてきた人物を見て俺は苦笑した。

「・・・・お前なぁ、あれだけ飛び掛るなって言ってるだろ」
「あぅ、ゴメン・・・・」
「まぁ、良いけどな。次からは気を付けろよ?」
「うん!」

そう頷いた真琴だったが、俺の隣に誰かいることに気付くと、素早く俺の後ろに回り込んで隠れてしまった。
まったく、人見知りな所は相変わらずだな・・・・。


「ねぇ、祐一。その人・・・・誰?」

相変わらず俺の後ろに隠れたまま、顔だけを覗かせて小声で尋ねてくる真琴。
う~ん、参ったな・・・・何て言おうか・・・・。

「え~っとだな、あー・・・・今日、俺のクラスに赴任してきた先生なんだけど・・・・」
「ねぇ、祐一君。この娘は?」

むぅ・・・・この際、お互いに自己紹介してもらった方が早いか。

「あ、俺と同じでここに居候してる・・・・ほら、自己紹介しろよ」

さっきから後ろに隠れっぱなしの真琴を、前に押し出して先生と対面させる。
髪型が違うけど・・・・やっぱ、こうやって見ると似てるよなぁ。

「あう・・・・あのね、真琴は真琴って言うの」
「へぇ、あなたも真琴っていう名前なんだ? 偶然ねぇ、私も真琴って言うの。沢渡真琴よ。よろしくね」
「あう、ホントに真琴と同じ名前・・・・」
「え?」

真琴の言葉に、真琴先生の動きが止まる。
まぁ、自分とまったく同姓同名の人と会ったら、誰だって戸惑うだろうが・・・・。


「祐一、おかえり~・・・・って、あれ? どうしてここに真琴先生が居るの?」
「あ、ああ、名雪か。何か先生も家がこっちの方だって言うからそれならお茶でもどうですかって誘ったんだけど・・・・」

いきなり姿を現した名雪にそう説明しながら、俺はお互いに見つめ合って動かなくなった2人の真琴を眺めていた。


(・・・・これも何かの『縁』、なのかな)


そんな事を考えながら。




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