過去の遺作置き場
7月17日
「ねぇ、香里」
「・・・・何?」
「どうして、あと3日で夏休みって時に水泳の授業なんてあるの?」
「あたしが知るわけないでしょ・・・・」
そう言って、香里は溜息を吐いた。
「ねぇ、香里」
「・・・・何?」
「どうして、あと3日で夏休みって時に水泳の授業なんてあるの?」
「あたしが知るわけないでしょ・・・・」
そう言って、香里は溜息を吐いた。
明後日には終業式があり、夏休みが始まる。
なのに、今頃水泳の授業・・・・。
うちの体育教師って何考えてるんだろ?
「二人とも気にしちゃだめだよ。それよりもせっかくの水泳なんだから楽しもうよ~」
名雪は一人嬉しそう。
そんなにプールに入れるのが嬉しいのかな?
・・・・そりゃあ、私だって嬉しくないって事はないけど。
ただ、夏休み開始3日前に初めての水泳の授業があるってのもどうかと思うわよ、実際。
「よ~し、準備体操始め!」
体育教師の号令に合わせて、私達は準備体操を始めた。
間違っても足なんか攣らないように、念入りに体をほぐしていく。
「ねぇ、そう言えば男子は一緒じゃないのね」
「当たり前でしょ? あんなケダモノたちの前にスクール水着姿なんか披露したら、大変な事になるわよ」
そう言われるとそうかも・・・・。
北川君なんか、特に暴走しそうだもんね。
昨日ので本性分かったし・・・・。
もう、あんな目に遭うのはごめんだわ。
ピーーーッ。
準備体操が終わると、体育教師が笛を鳴らして集合をかけた。
「よーし、全員ちゃんと体操したな? じゃあ、今日は自由遊泳にするから後は思う存分泳いでくれ。その代わり、体調が悪くなったりしたら無理せずにすぐ上がるんだぞ」
「「「「「分かりましたー」」」」」
「よし、じゃあ解散!」
教師の言葉が終わらないうちに、私達は一斉にプールに飛び込んだ。
あちらこちらから、水飛沫の上がる音が響く。
「うーん!気持ち良いっ」
「やっぱり夏はプールに限るおー」
「そうね、水に入ると涼しくて良いし」
私達は、それぞれ歓声の声を上げる。
さっきは何だかんだ文句言ってたけど・・・・やっぱり夏だもの、プールが嫌なはずないもんね。
「ねぇねぇ、祐子ちゃん、香里。せっかくだから競争してみようよ」
「「競争?」」
名雪の言葉に私と香里が同時に言葉を返した。
「うん、それでね。一番遅かった人が今日の放課後に百花屋で他の二人に何か奢るんだよ、どうかな?」
う~ん、競争かぁ。
私、自分の泳ぎがどれぐらいのものなのか分からないのよね。
でも、面白そうかも。
香里はどうなんだろ?
「香里、どうする?」
「あたしは構わないわよ」
「そっか。香里がやるんなら、私も良いよ」
「じゃあ、決まりだお~。コースはプールの端から端までで良いよね」
「おっけー」
「じゃあ、行くよ。よーいどん!」
名雪の合図の声と共に、私達3人は泳ぎだした。
「えへへ~、私いちば~ん」
「残念、私が二番か」
「そう言うわけだから、今日の放課後宜しくね~、香里」
「くっ・・・・り、理不尽だわっ!」
そう言いながら、最後に香里がプールから上がってきた。
「何で、私の前だけ障害物だらけなのよ!」
「障害物って・・・・皆、只のクラスメートだよ~」
「この際、一緒よ!」
そう、何故か香里の前だけクラスの皆で一杯だったのよね。
まるで、私と名雪を避けるみたいに・・・・どうしてだろ?
「でも負けは負けだよ」
「そう言う事ね。潔く認めたら香里?」
「な、納得いかない~~~~!!」
ごめんね、香里。
例え、邪魔されたとしても勝負の世界は非情なのよ・・・・。
「ちょっと休もうよ。私疲れちゃった」
「そうね。香里は?」
「私はもう少し泳いでくるわ。さっきのじゃほとんど不完全燃焼みたいだもの・・・・」
「そっか。じゃあ、また後で」
「えぇ」
そう言うと、香里は再びプールの中へと飛び込んで行った。
「ねえ、名雪」
「何? 祐子ちゃん」
「さっきのあれ・・・・名雪の差し金じゃあないわよね?」
「え? な、何の事だお?」
「香里の前にだけ、皆が集まってた事よ」
「わ、私がそんな事するわけないよ~」
そう言いながらも、名雪は慌ててどもってる。
やっぱり、そうなのね・・・・。
「名雪・・・・あなたねぇ」
「う・・・・だ、だってしょうがないんだよ。イチゴサンデー食べたくてしょうがなかったんだけど、今月はもうピンチなんだもん・・・・」
「しょうがなくないわよ。少しは我慢しなさいよね」
「う~・・・・我慢できないんだよ~」
「本当にもう、名雪ったら・・・・!?」
私は突然、嫌な視線を感じて後ろを振り返った。
後ろはただの金網。
その外には誰の姿も見えない。
でも・・・・今、確かに視線を感じたんだけど・・・・。
「うにゅ? 祐子ちゃんどうかした?」
「え? う、うん・・・・今視線を感じたような気がしたんだけど・・・・気のせいだったのかな?」
「案外、北川君とかがどこからか覗いてたりしてね~」
「や、やめてよ・・・・」
北川君にどこからか見られてると思ったら思わず身震いした。
以前なら違ったんだろうけど・・・・今では、悪寒しか感じない。
「あら、どうしたのよ二人とも」
そんな事を話してたら、香里がプールから上がって戻ってきた。
ずっと泳いでたのか、ちょっと疲れているようにも見える。
「あ、香里。聞いてよ、何か変な視線を感じるの」
「視線?」
香里は、繭を潜めて辺りを見回した。
「そう言えば・・・・何か嫌な感じはするわね」
「やっぱり、香里もそう思う?」
「でも、祐子が言うような視線は感じないわよ?」
「今は私も感じないわよ。多分、私に感づかれて逃げたんだと思う」
「え~、じゃあ何で香里がまだ嫌な感じを受けるの?」
「そうねぇ・・・・」
そう言うと、香里はぐるっと辺りを見回して、
「私が感じるのは、あそこからよ。何か変な気配を感じるの」
と言いながら、ある場所を指差した。
あれって・・・・。
「ねぇ・・・・あそこ、確か更衣室だよね」
「そうだね・・・・さっき、私達が着替えた場所だよ」
「・・・何か嫌な予感がするんだけど」
「行ってみましょう!」
走って更衣室の前までやってきた私達。
音を立てないように気をつけながら、そーっとドアに近づく。
「それじゃ、開けるわよ・・・・いっせいのえーいっ!」
バタン!
「え・・・・・?!」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「北川・・・・君?」
そこに居たのは、紛れもなく北川君。
あちこちのロッカーが開けられていて、その手には数枚のショーツが握られていて、頭に一枚被ってる。
あれ、見覚えが・・・・って、
「ちょっと、北川君! その手に持ってるのあたしのじゃない!!」
「あ~! 私のも持ってるよ!!」
「・・・・もしかして、頭に被ってるそれ・・・・・わ、私の?!」
「あ、あははは・・・・実はちょっと、迷い込んじゃって・・・・」
「・・・・どうやったら、更衣室に迷い込むって言うのよ。しかも何で下着を荒らす必要があるわけ?」
「う・・・・そ、それはだなぁ・・・・」
「「「き・た・が・わ・くぅ~ん・・・・とりあえず、一回死んでおく?」」」
私達3人の優しい声が更衣室に響く。
顔は笑ってるけど・・・・皆、目は笑ってない。
「は、はぅっ! せ、せめて話し合いで解決・・・・!」
「「「却下」」」
「さ、最後まで言わせ・・・・ぶげろはっ?!」
問答無用で、私達は北川君に襲い掛かった。
その日、3階の教室の窓から、学校が終わるまでの間簀巻きにされた北川君がずっと吊るされていた。
「お~い・・・・俺が悪かった、だから誰か下ろしてくれ~~~(泣)」
「自業自得よ」
「祐子ちゃん、香里~、帰ろ」
「そうね。あ、帰りに百花屋寄らないと♪」
「う・・・・忘れててくれたら良かったのに・・・・」
「忘れるわけないよっ。ね、祐子ちゃん」
「ふふふ、私は何頼もうかな~」
「お、お願いだからなるべく高いものはやめてね・・・・」
そんな事を話しながら、私達は教室を後にした。
うふふ、百花屋楽しみね~。
「・・・・俺を忘れて行かないでくれ・・・・(泣)」
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