過去の遺作置き場
8月12日
「それでは、私(わたくし) はリビングでお待ちしてますね」
「えぇ、ごめんねあやめさん」
「いえ、良いんですのよ」
そう言って、あやめさんは部屋を出て行った。
「さてと・・・」
私はあやめさんが完全に部屋を離れたのを確認すると、昨日と同じようにベッドに寝たままの北川君の方に振り向いた。
「北川君・・・どうしても確認しておきたい事があるんだけど良い?」
「・・・あぁ」
私の言葉に、北川君は真面目な顔で頷いた。
私の真面目な雰囲気を察したのだろう・・・。
「それでは、私(わたくし) はリビングでお待ちしてますね」
「えぇ、ごめんねあやめさん」
「いえ、良いんですのよ」
そう言って、あやめさんは部屋を出て行った。
「さてと・・・」
私はあやめさんが完全に部屋を離れたのを確認すると、昨日と同じようにベッドに寝たままの北川君の方に振り向いた。
「北川君・・・どうしても確認しておきたい事があるんだけど良い?」
「・・・あぁ」
私の言葉に、北川君は真面目な顔で頷いた。
私の真面目な雰囲気を察したのだろう・・・。
私は今、昨日に続いて再び北川君の家に来てる。
北川君がちょっと心配だったって言うのもあるけど・・・今はそれ以上にどうしても北川君に確認しておきたい事があった。
もし間違いがなければ北川君は・・・。
「相沢・・・? 聞きたい事があるんじゃなかったのか?」
「あ、うん、そうだった。ごめん」
北川君の声で現実に引き戻される。
こうやってすぐ思考の海に沈んじゃうの、止めた方が良いわね・・・。
私は気を取り直すと、北川君に問いかけた。
「北川君、あなたが体調崩し始めたのはいつ?」
「そうだな、顕著に現れるようになったのは最近だけど・・・身体の気だるさは、海へ行く前ぐらいから感じてたな・・・」
海へ行く前・・・とすると、大体2週間ぐらい前からね・・・。
確か海で見た時のあやめさんはまだ・・・。
・・・・・・。
「北川君、最近あやめさんを見て妙に感じた事ない?」
「妙? いや別に・・・ただ、最近随分元気になってきたなぁとは思うけど・・・」
「それだけじゃないわ。最近のあやめさん、随分姿がハッキリしてきたと思わない?」
「そう・・・言われてみれば・・・」
北川君はそう呟いて天井を見上げた。
そう・・・私が昨日感じた違和感・・・。
以前は、後ろの景色が透けるように見えていたあやめさんの身体・・・でも最近は、姿形がハッキリしてきてほとんど透けなくなってきてる。
あやめさんは、早ければお盆には消滅してしまうって言われてた・・・。
もしそれが本当なら、もうお盆まで数えるほどしかないこの時期にあやめさんがこんなに元気になって行ってるのはどう考えてもおかしい。
そして、最近弱りだした北川君・・・。
・・・考えられる事は一つしかない。
「北川君・・・」
「相沢・・・それ以上言わないでくれ」
私が何かを言い書けた時、北川君がそれを遮った。
でも・・・私はだっていられない。
「言わないわけにはいかないわ・・・北川君、あなたこのままだと・・・」
「言うなって言ってるだろっ!」
北川君は、身を起こしてそう叫んだ。
いきなりの事だったので、私も硬直してしまう。
「あやめさんが・・・そんな事するはずない・・・」
「北川君、気持ちは分かるけど・・・」
「悪い相沢。今日はもう帰ってくれ」
「北川君・・・」
私が呼びかけても、北川君はそれ以上何も喋ろうとはしなかった。
私は一つ溜息を吐くと、北川君を一瞥して部屋を後にした。
「もう・・・知らないからね・・・」
北川君に聞こえるか聞こえないかの声でそう呟きながら。
「俺だって・・・分かってるさ。でも・・・だからどうしろって言うんだよ。言えるわけないじゃないか・・・あやめさんに・・・」
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