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過去の遺作置き場
2017年12月13日 (Wed)
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2002年07月29日 (Mon)
「え~、であるからして、ここは・・・・」

教師の声が授業中の教室に響く。
俺はただぼーっとその声を右から左へ聞き流していた。
隣にも後ろにもその隣にも・・・・俺の見知った顔は居ない。
いや、本当は回り全部よく知った顔なのだが。

「ふぅ・・・・」

俺は一つ溜息を吐くと、黒板から視線を外し桜の舞う外を見やる。


春―――。


俺は、何故ここに居るんだ・・・・。

チャイムが鳴り昼休みとなる。
俺は特に急ぐ事もなく、食堂へと向かう為にゆっくりと立ち上がった。

「あ、祐くん!」

誰かに呼び止められ、俺は振り返る。
そこに居たのは、クラスメートで小さい頃からよく一緒に遊んでいた三條静嘩だった。
俺を『祐くん』なんて呼ぶのはこいつだけだ。

「・・・・何だ?」

俺は静嘩の元まで近寄ると、何か用があるのかと聞き返す。

「え、えと、その・・・・あのね、一緒にお弁当でもどうかなぁって・・・・」

そう言って、静嘩は鞄から二つの弁当箱を取り出す。

「・・・・・・・・」

俺はその弁当箱に一瞥をくれると、そのまま向きを変え教室の外へと向かう。

「あ、祐くん・・・・?」
「悪いが他を当たってくれ。俺は要らない」

それだけ言うと、俺は教室を後にした。






食堂でパンを2,3個買うと、俺は屋上へやってきた。
適当な所に腰を下ろすと、パックのジュースを飲みながらパンをかじる。
はっきり言って、購買で売っているパンなんて美味しくない。
でも、食堂で定食を食べる気にはなれなかったし、ましてや人の手作り弁当なんて尚更だった。
今の俺に、人の温もりはただ痛い・・・・。

うまくもないパンを食べ終えると、俺はその場にゴロンと寝転がる。
何かもう、午後の授業に出るのも億劫だ。
このまま寝てしまおう・・・・。

そして、10秒と経たずに俺は眠りに落ちていった。












俺は夢を見ている。
それは前に見ていた子供の頃の夢ではなく、つい最近の夢。
真っ白な雪に包まれた白銀の街。
浮かんでくるのは、少女達の顔・・・・。


全てに絶望する名雪や言葉をなくした真琴・・・・。
栞に香里・・・・舞、佐祐理さん・・・・。
そして身動き一つせず、ベッドに横たわる・・・・あゆ。


全てを目にして全てを思い出した時、俺は逃げ出した。
あの街から。
俺は耐えられなくなってしまった。
一度に沢山の事が起こりすぎて・・・・。
もう一度心が壊れてしまう前に俺は・・・・。





「・・・くん・・・・祐くんてば」
「う・・・・」

誰かに揺り起こされる感覚を受け、俺は目を覚ます。
目の前には静嘩の顔があった。

「祐くん、駄目だよ授業サボっちゃ・・・・先生カンカンだったよ?」
「煩いな・・・・ほっといてくれ」

俺はそれだけ言うと立ち上がり、静嘩を置いて早々と屋上を後にする。

「あ、待ってよ!」

そして静嘩も俺の後をついてきた。



「ねぇ、もう帰るんでしょ?」

静嘩が俺の後を追いかけながらそんな事を聞いてくる。

「あぁ、もう特に用なんて無いしな」
「あ、それじゃあ一緒に・・・・」
「静嘩」
「え?な、何?」

静嘩が最後まで言い切る前に、俺は口を挟む。

「もう、俺に付きまとうな」
「え・・・・?」

一瞬何を言われたのか分からないと言った顔をする静嘩。
俺はそんな静嘩を置いて、その場を後にした。



「祐・・・・くん・・・・」












今日も一人、夜の町を当てもなしぶらつく。
俺はこっちに戻ってきてから、毎日がこんな調子だった。
部屋に居ると、言い用の無い感覚と怒りの戸惑いの感情を覚える。
こうやって、街を歩いていると少しは気分が紛れた。

ふと、歩いている時に知らない人間と肩がぶつかり合う。
こんなのはよくある事だ。
大抵がお互い気にもせずにそのまま行ってしまう。
しかし・・・・中にはこんなくだらない事にこだわるバカも居る。
そして、今肩をぶつけた相手はまさしくそのバカだった。

「まてや、コラ!」

3人組の金髪のチャラチャラした小僧共が俺を取り囲む。
多分・・・・いや、間違いなく俺より年下だろう。

「人に肩ぶつけといて、何も言わずに行くきかコラ、あん?」

そう言って、その3人は俺を路地裏に連れ込んだ。




ドボォッ。

「うげぇっ!!」

俺は金髪のピアスをした奴に思いっきりボディーブローを叩き込む。
そのピアス野郎は腹を押さえて転げ回り、激しく嘔吐する。
渾身の力を込めた拳が鳩尾に入ったのだから、当たり前だろう。
今現在、路地裏の行き止まりには俺と3人組のバカ共がいる。
2人はとうに気絶してしまっていて、残っているのは今激しく嘔吐しているこいつだけだった。
俺は、そいつのすぐ近くまで歩み寄ると、思いっきり下顎を蹴り上げた。
バキィッと言う大きな音がして、そいつが仰向けに倒れる。
かなり良い感触がしたから、顎がくだけたかもな・・・・。

俺は倒れたバカ達に一瞥をくれると、その場を去った。









しばらく歩いていると、いつの間にか近所の公園にたどり着いていた。
俺は真っ暗闇の中、手近のブランコに腰掛ける。


俺・・・・何やってるんだろう・・・・?


ふと、そんな事が頭を巡った。
こっちに”逃げて”きてから、もう2ヶ月と少しが経とうとしている。
その間、昼間は学校に行きながらも他人との関わりをさけ、夜は街を歩き回り因縁つけてきた奴と喧嘩する毎日。
俺自身、何をやってるのか訳が分からなかった。

ふと空を見上げ、あの街に置き去りにしてきたものを思い浮かべる。
何で逃げたりしたんだろう。
あんな時こそ、俺はみんなの力になってやらないといけなかったのに。
でも、ちょっと気付くのが遅すぎたかも知れない・・・・。


俺はバカだ・・・・本当にバカだ。


俺はブランコから立ち上がると、家へと帰った。













それから1週間。

クラスメートだけでなく、静嘩さえも一切俺に話しかけてこなくなった頃、5通の葉書が俺の家に届いた。
俺はその全てに目を通す。
どれもあの街の住所だった。

そこには・・・・。

真琴が消えた事、舞が行方不明になった事、そして栞と秋子さん、あゆが亡くなった事が書かれていた。
全てを読み終えた後、俺は脱力したかのように手からその葉書を落とし、その場に座りこんだ。
その目は虚ろでどこを見ているか分からなかっただろう。




そして・・・・俺の心は再び壊れてしまった。




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