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過去の遺作置き場
2024年04月26日 (Fri)
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2002年07月28日 (Sun)
『朝~朝だよ~、朝起きて学校行くよ~』
「・・・・ん」

カチッ。

いつものように、更に眠気を誘うような目覚ましを消すと俺は身を起こした。
カーテンを開けると、外は一面の銀世界。
一晩で一気につもったらしい。
今日は寒くなるな・・・・。
そんな事を考えながら、俺は制服に着替える。

『ジリリリリリ・・・・!』
『ピピピッ、ピピピッ・・・・』
『いっきまーす』
『へへ、燃えたろ?』
『そのまま死ねっ!』

突然隣から聞こえてくる多種多様の目覚ましの音。
って、何か変な声も聞こえたが。

「・・・・一体、どう言う目覚まし使ってんだ?」


俺は着替え終わると、自分の部屋を出て名雪の部屋へ向かう。


「なーゆーきーっ。起きろー!遅刻するぞー!!」

無駄だと分かってはいるが、一応部屋の外から呼びかける。
・・・・案の定反応なし。
しょうがない、突入開始。

部屋の戸を開けると、俺は中に入った。
ベッドの方に視線を送ると、やっぱりと言うか当然と言うか、名雪は騒音とも言える目覚ましに囲まれながら幸せそうに寝息を立てている。
いつも思うが、何でこれで寝てられるんだ?


「おい名雪、朝だ起きろ」

とりあえず煩い目覚ましを全て止めると、俺は名雪を揺り動かしてみるがやっぱり反応なし。

ふ~む、ならば。

「名雪っ、そこの窓際に猫が一匹!!」
「え、どこ!?」

ガバッと飛び起きる名雪。

「ねぇねぇ祐一!猫さんどこ!?」
「・・・・もう居なくなった」

本当は最初から居なかったんだが・・・・。

「うー、残念だよー・・・・」
「そんな事よりとっとと起きろ。また遅刻するぞ」
「あ、うん」

名雪が完全にベッドから抜け出したのを確認すると、俺は部屋を出て1階へと降りた。





「秋子さん、おはようございます」
「おはようございます、祐一さん」

秋子さんに挨拶すると、俺はいつもの席に座る。

「祐一さん、名雪はまだ寝てましたか?」
「いえ、起こしましたよ」
「祐一さんのおかげで毎朝助かります」
「・・・・本当は嫌なんですけど」

そう言いながら、俺はバターを塗ったトーストにかじりついた。

「やっぱりそうですよねぇ・・・・あ、祐一さんジャム要り」
「ません」
「あらあら、残念」

秋子さんが最後まで言う前に否定しておく。
流石に勘弁してほしい。


「おはようございまふ~・・・・」

眠たげな目を擦りながら名雪が降りてきた。
そのまま自分の席に座ると、

「くー」

寝ていた。

「寝るなっ」
「うー、眠いよ祐一・・・・」
「眠くても寝るなっ」
「くー」
「だから寝るなっ」
「うー・・・・」

唸りながら、トーストにイチゴジャムを塗る名雪。

「いっちごじゃむ~、いっちごじゃむ~、甘くて美味しい・・・くー」
「寝るなっ」
「うにゅ・・・・イチゴジャム美味しいよ~」

最早会話が噛み合っていない。
つーか、俺さっきから『寝るなっ』しか言ってないような気がする。
こんなんで良いのかっ?!

・・・・良いんだろうな。





ふと、テレビに視線を移す。

「臨時ニュースです。今日、日本時間の夜8時ごろニューヤークがクリミナルによる襲撃を受け、壊滅的状態に陥ったとの事です。地球連邦軍は直ちに軍を派遣したとの事ですが、今のところ戦況は不明です・・・・」

「また・・・・だね」

名雪が食べていたトーストから口を放すとそう呟く。

「香里、大丈夫かなぁ・・・・」
「香里なら心配ないだろ。それよりもこっちの方が心配だ。今の所日本は一度も襲われていないけど、これから先いつ来るか分からない」
「そうだね・・・・」
「あらあら、暗くなっててはいけませんよ。それよりもそろそろ行かないと遅刻なんじゃないですか?」

秋子さんの言葉に現実に引き戻された俺は、慌てて時計を見やる。

「だぁっ、もうこんな時間じゃねぇか!名雪、もう行くぞ!!」
「え~、でも私まだ全部食べてない・・・・」
「そんなもの知るか!」
「大丈夫だよ、100mを8秒で走れば充分間に合うよ」

それは世界新だ。

「馬鹿な事言ってないで行くぞ!」

俺は名雪の腕を掴むと無理矢理引きずっていく。

「うー、私のイチゴジャム~」

こ、こいつは・・・・。








いつもの朝の通学路。
そしていつものように名雪と二人で走る・・・・。

「イチゴ~、私のイチゴジャム~・・・・」

まだ言ってんのか・・・・。

「いい加減に諦めろ。放課後に百花屋で何か奢ってやるから」
「ほんと!じゃあ、イチゴサンデー!」
「まったく、お前そればっか・・・・え?」

名雪の方を振り返った時、その後ろの遥か上空に大きな人型のロボットが目に入った。
それと同時に、その人型メカは何かミサイルのようなものを撃って・・・・?!

「名雪ーっ、伏せろっ!!」
「え?!」

名雪がそう言って振り替えった瞬間、ミサイルは近くの民家に着弾し爆発した。

「きゃあーーーーーっ!!!」
「な、名雪っ?!」

名雪の悲鳴を聞き辺りを見回そうとするが、爆発の時の衝撃と突風で立ち上がることが出来ない。

くそっ、名雪!





それから、数分後・・・・。
辺りの様子が晴れてきた。
俺は立ち上がると、名雪の姿を探そうとして・・・・目の前の光景が目に入った。

崩れた瓦礫の下敷きになって倒れている少女。
そこからとめどなく流れる赤い血・・・・。
倒れている少女はぐったりとしていて、身動き一つしない。

「な、名雪・・・・?」

俺は、その倒れた少女に近寄より崩れた瓦礫を持ち上げてどかす。
・・・・それは、間違いなく俺の従姉の少女、名雪。

「名雪・・・・おい、名雪!」

体を揺り動かしてみるが、反応がない。

「う、嘘だろ・・・・名雪、返事をしてくれ・・・・」

しかし、名雪は身動き一つしなかった。

「名雪・・・・名雪っ、名雪ぃっ!!!!」

俺は、名雪の体を抱き上げた。
冷たくなったその体が、俺に現実をはっきりと認識させる。

「嘘だ・・・・嘘だっ!嘘だぁぁぁぁぁっっーーーー!!!!!」


俺の叫びが・・・・辺りに響き渡った・・・・。







その頃・・・・。
ここはどこかの地下格納庫。
そこには、全身を暗い青で統一された一機の機体が眠っていた。
そのフォルムは、どこか騎士のイメージを想像させる。


『嘘だぁぁぁぁぁっっーーーー!!!!!』


どこからともなく、絶叫とも言える叫びが響く。
すると突然、その声に反応したのか・・・・その機体の目に光が宿る。
自分を繋いでいるコードや拘束具を引きちぎると、目の前の扉を無理矢理開き、凄まじい勢いである場所へ向かって飛んでいった・・・・。





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