過去の遺作置き場
朝。
教室で目が覚めた俺の目に信じられないものが飛び込んできた。
それは巨大で、その重さで今にも床を突き破らんばかりだ。
「・・・何で戦車が?」
それが俺の第一声だった。
教室で目が覚めた俺の目に信じられないものが飛び込んできた。
それは巨大で、その重さで今にも床を突き破らんばかりだ。
「・・・何で戦車が?」
それが俺の第一声だった。
今、俺たちは教室のど真ん中に一夜にして現れた戦車を囲んでいる。
この戦車・・・確かレオパルドとか言う戦車じゃなかったか?
何でこんなもんがここに・・・。
「相沢さん、そこにこんなものがあったんだけど・・・」
そう言って、香里は一枚のメモ書きを見せる。
これは・・・佐祐理さんか。
え~と、何々・・・。
『あはは~、展示品として戦車一台置いていきますので自由に使ってくださいね~』
・・・何故っ?!
メイド喫茶にこんな戦車一台置いといて何をしろと言うんだ?!
「・・・昨日、余計な事言わなきゃ良かった・・・」
そう言いながら項垂れる香里。
そう言えば、インパクトが足りないとか言ってたのは香里だったな。
たしかに、戦車が一台置いてあれば、この上ないインパクトになるだろうが。
・・・でもメイド喫茶には、これでもかと言うぐらいミスマッチだな。
で・・・とりあえず、自分達ではどうしようもないので、この戦車はこのまま展示品として使う事になった。
佐祐理さんは、またいつ来るかなんて分からないし・・・。
それにしても佐祐理さん・・・どう言うつもりで戦車なんか置いていったんだろう?(汗)
謎だ・・・。
さて、そう言えば衣装のメイド服はどうなったんだろう。
いい加減出来たんだろうな?
「北川?・・・メイド服の方、どう?」
「え?あ、あぁ、もうほとんど出来てるぞ。ほら」
そう言って北川はメイド服を取り出す。
ほぉ・・・確かに出来上がってるみたいだな。
「んで・・・後は着付けしてみるだけなんだけど・・・」
着付けねぇ・・・・って、北川、何だその目は?
「相沢・・・ちょっと着てみないか?」
「・・・何で私が」
「いや、ただ単に相沢が近くに居たからと言うだけなんだが・・・どうせ、当日には着なきゃならないんだから、今のうちに慣れておいても良いんじゃないか?」
そりゃあ、そうなんだが・・・でも、俺だけ着るのもなぁ・・・。
あ、そうだ。
「ねぇ、香里~。ちょっと来てくれる?」
内装を手伝っていた香里に声をかける。
香里は、呼ばれてすぐこちらにやってきた。
「何?今忙しいんだけど・・・」
「実はメイド服が出来上がったんだけど・・・」
「・・・ようやく出来たの?」
香里が呆れたように言う。
「そ。で・・・ちょっと着付けをしようと思うんだけど・・・」
「・・・それじゃ」
と言って、そそくさと逃げ出そうとする香里。
待たんかい。
「何で逃げるのよ?」
「あたしは着ないわよ!」
「へ~・・・でも、学園祭の出し物決める時、問答無用でこれに決めたの誰だっけ?」
「う・・・」
「そう言うわけだから、大人しく私と一緒に着替えなさい」
「・・・・・・・・・」
香里はしぶしぶ従った。
「と言う訳で、2着ね」
「相沢と美坂、二人のメイド服姿が一度に拝めるとは・・・素晴らしいっ」
そう言いながら、俺たちに服を渡す北川。
「言っとくけど、北川に見せる為じゃないんだからね・・・」
「まぁ、良いじゃないか!あ、そうだ・・・着替えたら、これつけてくれ」
そう言って北川から手渡されたのは・・・・何だこれ、眼鏡?
「北川君・・・死にたい?」
にっこりと笑う香里。
でも、目が笑ってない。
すでにその右手にはとげつきのメリケンサックが装着されている。
「ちょ、ちょっと待て!この眼鏡を提案したのは、俺じゃなくて石橋だぞ!!」
「「はぁ?」」
石橋が?
一体何考えとるんだ、あの教師は・・・。
「あ、ちなみに眼鏡着用を拒否した者は、問答無用で留年らしいぞ」
・・・・職権乱用だ。
ほんっっっっとに何考えてんだよ、あの教師は。
「・・・卒業した後、覚えてなさいよ・・・」
香里・・・お礼参りでもする気か?
いや、別に止めはせんがな。
「それじゃ、とにかくとっとと着替えましょ」
「・・・分かったわ」
いやだから、香里怖いって。
少し落ち着け・・・。
15分後・・・。
更衣室で着替え終わった俺たちは、教室へと戻ってきた。
なんだかんだで、律儀に眼鏡もかけている。
それにしても・・・戻ってくる間に思ったのだが、何で廊下にこんなに人が溢れてるんだ?
しかもみんな何かしらの衣装着てるし・・・。
バルタン星人やらスーパーマンやら・・・一体、何する気なんだか。
ま、俺たちには関係ないか・・・。
ガラッ。
俺と香里は教室の扉を開けると、二人並んで中へと入る。
『おぉ~・・・・』
誰からともなく、溜息が漏れた。
と、いつの間にか俺たち二人の前に来ていた妖しい影・・・もとい北川。
俺たちを凝視したまま、まったく動かない。
「あ、相沢・・・美坂・・・」
「「な、何?」」
「・・・うお~~~!!!!」
「「んなっ?!」」
いきなり北川は叫んだかと思うと、俺たちに向かって飛びついてくる。
「ナイスだ!ナイスだぞ二人とも!メイド服に身を包んだ眼鏡の美少女が二人!!こんな幸せがあって良いんだろうかぁっ!!!」
「こ、こら!ちょ・・・やめっ!!」
北川に抱きつかれた俺と香里は何とかして北川を引き剥がそうとするが、中々手を離さない。
「うお~~~~俺はもう二度とお前達を離さんぞぉぉぉ~~~!!」
そう言いながら北川は離れない。
と、ふと北川の手が俺と美坂の胸に触れる。
「あ・・・♪」
「「こ、この・・・・いい加減に、しなさぁぁぁぁいっっっ!!!!!」」
ドゴォン!!
「ぐはぁっ!!??」
北川の首に、前後から俺と美坂の強力なラリアートが炸裂する。
「く・・・くろすぼんばー・・・・???」
謎な言葉を残して、北川はたまたまそこ置いてあった椅子の上に崩れ落ちる。
「へ・・へへ・・・おっつぁん・・・俺ぁ、萌え尽きちまったぜ・・・真っ白だぁ・・・」
そう言いながら、本当に真っ白になる北川。
その姿は、さながら某ボクサーの様だ。
だが『もえつきる』の字が違うぞ・・・。
・・・どうやら、まだ余裕があるらしい。
「・・・・・・・」
ドカァッ!
「ギャフッ?!」
そこへ、香里が止めとばかりに無言で北川の頭に踵落としを決める。
あ・・・白い北川が崩れてゆく・・・。
「まったくもう・・・これでしばらくは動けないでしょ」
しばらくどころか、永久に動きそうに無いぞ・・・。
・・・でも、北川だし良いか。
ところで香里・・・いい加減に足を下ろせ。
でないと、スカートの中が丸見えだ。
それにようやく気付いたのか、香里はバッと足を下ろすとスカートを抑える。
俯く香里の顔は恥ずかしさからか真っ赤だ。
今更、遅いって・・・。
「ところで、香里・・・」
「・・・何?」
「この忙しいのに北川再起不能にしたりして・・・その分の仕事はやってくれるの?」
「あ・・・・・」
香里、徹夜決定。
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