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過去の遺作置き場
2024年04月26日 (Fri)
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2002年06月28日 (Fri)
・・・・・・・・・。
う・・・ん・・・?
何だ、どこだここ?
辺りの景色は歪んでいて、まるで異次元のよう・・・・。
・・・・?!
な、何だありゃ・・・・龍・・・?
八つ首の龍・・・ヤマタノオロチとか言うのだろうか?
そして、その龍の目の前に一人の少女・・・。
腰まである長いポニーテールに巫女服姿が印象的だ。

「・・・・・・・・・・」

その少女が、八つ首の龍に向かって何か囁いている。
何を言っているのか気になった俺は、その少女に近づこうと・・・。

「グオォォォォーーーーーーー・・・・・・」
「うわっ?!」

突然、その龍が大きな雄叫びを上げた。
それと同時に俺の意識が薄れていく・・・。
かすかに薄れる意識の中で、俺を見て驚いてる風な少女が見えた気がした・・・。



「う・・・・ん・・・・」

朝。
俺は自然と目が覚めた。
まだ早い時間の為、周りのクラスメート達はまだ皆寝ている。
・・・・・・・・・・・。
今見た夢・・・一体何だったんだろう・・・?










『実行委員会より全校生徒へ、女子生徒は10時までに下校してください。繰り返します。女子生徒は10時までに下校してください』

校内に響く全校放送の声。
現在の時間は夜の9時過ぎ・・・つまり、あと1時間足らずで女子陣は帰らねばならないのだが・・・。

「う~・・・・全然、終わらないよぉ・・・・」

そんな名雪の声が聞こえてくる。
どう考えても、うちのクラスの奴らは帰れないな・・・。
ま、今日に始まった事ではないが。


「引けーっ、力の限り引けーっ!根性見せてみろぉっ!!」

外からそんな怒鳴り声が聞こえてくる。
何事かと外を見てみると、巨大な看板を引き上げているところのようだ。
あんなでかい看板どうするんだ、一体?

「相沢さん?他のクラスの事は良いから、こっちを手伝って欲しいんだけど」

振り返ると、腕組みをした香里がこちらを睨んでいる。
これ以上文句を言われる前に、作業に戻るか・・・・。




「それにしても・・・これで本当にお客さん来るの?」

俺は、教室のど真ん中に設置された、大きな戦車を見ながら呟いた。
その巨体で教室の半分以上が埋まってしまっている。
どう考えても客の入るスペースが足り無すぎると思うのだが・・・。

「あはは~、大丈夫ですよ~」

一昨日に引き続き、再び遊びに来ている佐祐理さんは、笑いながらそう言う。
戦車を持ち込んだ本人が言うのだから、多分大丈夫なんだろう。
一体何が大丈夫なのかはよく分からないが。


「ところで・・・誰か北川君見なかった?」

香里がウェイトレスの衣装であるメイド服を片手に抱えて言った。
そう言えば・・・今日は、北川をずっと見てないな。
いや、今日はと言うよりメイド服を仕上げてから、その後ずっとか。
どこ行ったんだ?

「ほんとうにもう・・・どこに行ったのかしら?衣装の最終チェックしてるのに・・・」
「北川君なら、今、真琴とあゆちゃんに探してもらってるから、その内見つかるおー」

名雪・・・寝ながら作業しつつ、返事をするな。

「そう・・・見つかったらたっぷりお仕置きしないとね♪」

香里は特に気にした風もなく、右手にメリケンサックをはめてにっこりと笑う。
なんていうか・・・目が笑ってないのだが。
こりゃ、また血の雨が降るな・・・・。

「香里?人手が足りないんだから、再起不能にだけはしないでよ」
「わかってるわ」

本当に分かってんだろうな、おい?


「おーい、お前達まだ店は完成せんのか?一体いつになったら出来上がるんだ?」

そう言って顔を出してきたのは・・・・何だ、石橋か。
担任の癖に最近全然顔出してないから、すっかり忘れてた。

「そうは言っても・・・こう、問題ばっかり発生してたら進むものも進みませんよ」
「問題って・・・うお!何だこの戦車は?!」

教室のど真ん中に鎮座する戦車に驚き、腰を抜かす石橋。
まぁ、普通はこうなるか・・・。

「だ、誰だーっ、こんなもの持ち込んだのはっ!!??」

腰を抜かしたまま、石橋が大声で怒鳴る。
あ、そんな大きな声を出すと・・・。

ギ、ギギィィ・・・・。

妙な軋み音をたてて戦車が少し沈み込む。

「先生~、無用なショックはさけていただけますか~? オプションをはずして軽減してあるとは言えこのレオパルド、空重量で約40トン~。床が抜けても責任は持ちかねますので~」

あはは~と笑いながら佐祐理さんがそう答える。
いやあの佐祐理さん・・・・笑い事じゃないんですが(汗)

「な、何っ?! おい、倉田!俺は戦車の持ち込みを許可した覚えはないぞっ?!」

もちろん、俺たちも許可した覚えは無い。

「そうは言っても、持ち込んでしまったものはしょうがないですし~・・・いっその事没収します~?」
「こ、こんなもん没収できるか・・・」

だろうな。
もし本当に没収したら、俺はあんたを尊敬するよ。

「ったく・・・どうやって持ち込みやがったんだ・・・・」

それは俺も聞きたい。

「あはは~、それは企業秘密ですよ~」

・・・もう良いです。




「み、美坂・・・ほ、本当に良いのか???」

突如として、どこからともなく北川の声が聞こえてくる。

「ほ、本当に良いんだな?やっちゃうぞっ?!」

なんと言うか・・・・中々盛り上がっているようだ。
しかし・・・・。

「香里・・・・いつから、分身できるようになったの?」

俺は、すぐ横にいる香里に話しかける。

「そんな事できるわけないでしょっ!!」

当たり前だが至極当然な答えが返ってきた。
ふ~む、だとすると北川は一人で何やってるんだ?

「あ~、俺は幸せ者だ~・・・」

そう言ってる間にも、北川の声は聞こえてくる。
どうやら、この戦車の中から聞こえてくるらしい。

「とりあえず、サボり魔を引きずりだすわよ」
「そうね・・・」


俺たちは戦車に登ると、ハッチを開けて中を覗き込む。
そこには、幸せそうな顔をして寝ている北川の姿が在った。

「あぁ、美坂・・・そんな事まで、あ~・・・・」

そう言いながら、北川は身悶えている。
よほど良い夢を見ているのだろう。

「い・・・いい加減にしなさいっ!!!」

ドゲシッ。

「おごわっ?!」

我慢できなくなったのか、美坂は北川の頭の上から思いっきり踏んづけた。
ギュイーーーーン。

「「ななななな!!??」」

突如として、戦車の砲身が旋回する。
どうやら踏んづけられた拍子に、北川がどこか操縦系統に手をかけたらしい。

「おわぁっ!」

いきなり旋回してきた砲身を避け切れず、石橋は咄嗟に砲身にしがみついた。
一方、俺たちはいきなり戦車が回転した為、バランスを崩して戦車の中に落っこちてしまった。

「おぉ、美坂だけではなく相沢までっ。二人ともそんなに俺の事ぉぉっ!!」

未だ寝ぼけている北川が、落っこちてきた俺と香里を受け止めると、そのまま俺たちに熱い抱擁を・・・・って、

「「止めなさいって言ってるでしょっ!!」

ドガァッ!

「ぐはっ?!」

今度はツープラトンで、北川の顔面に蹴りが決まる。
つーか、我ながら、こんな狭いところでよく足が上がったもんだ。
顔面に二つの蹴りを食らった北川は、そのまま後ろに倒れこむ。
その拍子に、またハンドルか何かに触ったらしい。
再び、戦車の砲身が音をたてて旋回する。

「のわわわわ~~~~っ!!!」

ガシャーーン。
バリーーン。

砲身から手を離しそこなった石橋と共に周りの物を薙ぎ払いながら、砲身は窓を突き破りそこで止まった。

「ひ、ひぇ~~~だ、誰か。誰かお助けを~~~~~!!」

窓から外に突き出た砲身にしがみついたままの石橋の悲鳴が響き渡る。

「ただいまー!アンテナ、見つからなかったよ!・・・ってあれ?」
「う、うぐぅ・・・何これ、一体どうしちゃったの?」

ちょうど、真琴とあゆの二人が戻ってきたらしい。
良かったな、二人とも。
その場に居なかったおかげで、被害受けずに済んで。

それより、この荒れ果てた惨状・・・・どうしよう?



俺は深く、ふか~く溜息を吐いた。



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