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過去の遺作置き場
2024年04月20日 (Sat)
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2002年08月07日 (Wed)
「随分と大きくなったなぁ」
「ふふ、もういつ生まれてもおかしくないわね」

そんな事を話しながら、俺は香里の大きく膨らんだお腹を見やる。
香里は、幸せそうな顔で膨らんだお腹をさすっている。
二人目・・・・か。

「ただいまーっ」

ドタドタドタ・・・・。

威勢の良い声と共に、誰かの廊下を走る音が聞こえてくる。
菜織が帰ったみたいだな。

「パパ、ママ!」

リビングに入ってくるなり、そう言って俺に飛びついてくる菜織。
俺は咄嗟に両手で菜織を受け止める。

「おっと。こら菜織、危ないからいきなり飛びついてくるなって言ってるだろう」
「えへへー・・・・」

そう言いながらも、俺は菜織を抱えて持ち上げる。
菜織は嬉しそうだ。


「ねぇ、ママ。赤ちゃんまだ生まれないの?」
「そうね、もうすぐ生まれてくると思うわよ。だからもうちょっと辛抱してね、菜織」
「うん!」
「さ、もう良いだろ。とりあえず着替えて来い」

俺はそう言って菜織を下ろす。

「分かったよ、パパ!」

菜織は自分の部屋へ駆けて行った。


「まったくあいつは・・・・危ないから、家の中で走るなと言ってるのに」
「ふふふ・・・・」

苦笑交じりに呟く俺を見て、香里がクスクスと笑った。

「どうした?」
「うぅん、別に。ただ今感じている幸せを噛み締めただけよ」
「香里・・・・」

俺は香里の座るソファの隣に腰を下ろした。
俺と香里は、お互いに相手の目を見詰め合う。
そして少しづつ顔が近づいて行き、唇が触れ合い・・・・。

「あーっ!」
「「!?」」

突然の声に振り向くと、そこには着替え終わった菜織がこっちを指差しながら立っていた。
タタタタッ・・・・と俺の方に向かって走ってくると、座る俺の膝の上にポフッと飛び乗る。

「ママだけずるいよっ。パパ、わたしにもキスして~!」

そう言いながら、顔を近づけてくる菜織。
やれやれ、しょうがないなまったく。
俺は苦笑しながら、菜織の唇に軽く触れる。

「・・・・これだけ?」
「充分だろ。それにあんまり菜織にばかり構ってると、今度はママが拗ねちゃうからな」
「あ、それもそうだね~」
「なっ?!ちょ、ちょっとあたしは別に・・・・」
「あ、ママ顔真っ赤っか~」
「お、本当だ」
「もう・・・・知らない」

香里は口を少し尖らせて、プイとそっぽを向いてしまった。
なんと言うか、そんな香里の仕草が可愛くて仕方なかった。

「拗ねるなよ、香里~」
「ママ~、機嫌なおして~」
「ふ~ん、だ」
「じゃあ、これで許してくれよ」
「え?あ・・・・」

香里が返事をする間も無く、俺は素早く香里の唇を奪った。
菜織の時とは違う、長い長い大人のキス。

「ん、ぅふ・・・・」

唇を離すと、香里はうっとりとした表情でこちらを見ている。

「あ~、ママ良いなぁ」

そんな俺たちを見て菜織は羨ましそうに呟いた。
はは、これはもう苦笑するしかないな。

「菜織は、もっと大きくなったらな」
「ほんとに?約束だよ、パパ!」
「・・・・良いの?そんな事言って」
「・・・・大きくなる頃には、菜織ももうこんな事言わないだろ」
「それもそうね・・・・」

まぁ、育ってからもこんな事言ってたらそれはそれで嬉しいけどな。
娘は誰にもやら~ん!・・・・なんて思ってみたり。
・・・・何、言ってるんだ俺は。



「あ、ねぇねぇママ。お腹触ってみても良い?」
「えぇ、良いわよ」
「わーい」

そう言うと、菜織は俺の膝の上に乗って横から香里のお腹に手を当てた。

「わぁ・・・・動いてる・・・・」

菜織が感嘆の声を上げた。




「う・・・・!」
「え、ママ?!」

突然、香里が苦しみだす。
・・・・もしかして、陣痛か?!

「香里、始まったのか!?」
「そ、そうみたい・・・・」
「マ、ママ!どうしたの?!わたしが何かいけない事したから!?」

自分が手を当てている時に、急に香里が苦しみだしたから菜織は自分のせいだと思っているらしい。
慌てた顔で、香里に呼びかけている。

「菜織、心配しなくて良い。大丈夫だから」
「・・・・そうなの、パパ?」
「あぁ。さ、香里歩けるか?急いで産婦人科まで行こう」
「え、えぇ・・・・」
「わたしも行くよ!」
「そうだな、よし」

俺は香里に肩を貸して車へと向かった。
その後ろを菜織も心配そうにしながらついてくる。

さぁて、これからが正念場だな。










病院に着くと、香里はすぐさま分娩室へと連れて行かれた。
実は車の中で破水してしまったのだ。
それを見て菜織が卒倒しかけたが、何とかなだめて無事に病院へと辿り着けた。

俺は廊下の椅子に座り、無事に生まれる事をただひたすら祈っていた。
菜織もその横に大人しく座り、時が来るのを待っている。






どれぐらいの時間が過ぎただろうか。

ガチャ。

扉が開き、菜織の時にもお世話になった先生が姿を見せる。

「あ、先生・・・・」
「おめでとう、立派な女の子だよ」
「そうか・・・・良かった。会っても大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だよ」
「わたしも~」

俺は菜織を連れて、中へと入った。
そこには生まれたばかりの赤ちゃんを横に寝かせて見つめる香里の姿があった。

「香里、ご苦労さん」

俺は、ベッドの寝ている香里に声をかける。

「ふふ、ありがと」
「わぁ、これがわたしの妹なんだぁ・・・・」

菜織は香里の横で寝ている赤ちゃんをじぃっと眺めている。

「良かったな、菜織。希望通り妹が生まれて」
「うん!」

菜織は嬉しそうに大きく頷いた。





さぁて、これからが大変だな・・・・。




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