・・・・・・・・・。
う・・・ん・・・？
ここは・・・・？
辺りの景色は歪んでいて、まるで異次元のような世界・・・・。
確か・・・昨日も夢で見たな・・・。
とすると・・・。
後ろを振り返ると、案の定あの八つ首の龍が居た。
しかし、今回はあの巫女服を着たポニーテールの少女の姿は見えない。
今、ここに居るのは俺とこの龍だけだ。


「グオォォォォーーーーーーー・・・・・・」
「くっ・・・！」

昨日と同じだ。
龍の突然の咆哮と共に、俺の意識が薄れていく。
それと同時に、俺はどこかへ飛ばされるような感覚を受けた・・・。

『実行委員会より連絡します。各クラス、サークルの責任者は、ただちに音楽室に集合してください。繰り返します。各クラス、サークルの責任者は、ただちに音楽室に集合してください』

朝。
いつもの長い一日が始まろうとしている。
今日も頑張らなきゃな・・・。




「ふわぁふ・・・・それにしても眠いわね・・・・」

香里が女の子らしい可愛い欠伸をしながらぼやく。
現在、俺たちは学校の水道で朝の身だしなみ中だ。

「あうー・・・・昨日はほとんど徹夜で作業してたもんね・・・」

そう言う真琴も眠そうだ。
昨日はほぼ全員が徹夜だったからな。

「くー」
「名雪・・・あんた、一体どれだけ寝たら気が済むわけ？」

名雪は、さっきから寝ながら歯磨きをしている。
そう言えば、徹夜で作業してる間も名雪だけは寝ながら作業をしていた。
何か・・・最近、名雪が起きてる所をあまり見てないような・・・？
いくら何でも、少し寝すぎだぞ名雪。


「それにしても、佐祐理達いつから泊り込んでるんでしょうねぇ？」
「・・・・ずっと前から」
「・・・・そんな昔の事忘れたわ」
「うぐぅ、でもあともう一息だよ。皆で頑張ろう」
「あゆ・・・・あなた、結構タフね」

上から順に佐祐理さん、舞、香里、あゆ、俺である。
う～む、いちいち名前を書かないと分からないようでは駄目だぞ。
・・・俺、誰に言ってんだろ？



「あ、おい。皆見ろよ！」

唐突に大声を上げたのは北川。
お前、居たのか・・・・。

「さっきからずっと居たわい！それよりもあれを見ろ！」

むぅ、声に出ていたらしい。
気をつけねば。
ま、それはともかくとして、北川の指差す方向を見る。

あれは・・・・石橋？
なんと言うか・・・やつれたな。

「う～ん・・・・かなりやつれてるわね」
「あれ・・・・石橋先生だよね？」
「なんか見る影もないよ・・・・」
「あはは～、無理もないですね。ハードなスケジュールで只でさえ疲れてるのに、昨日は九死に一生を得たみたいですし～」
「・・・・歩くストレス」

まったくその通りだな。
あれじゃあ、周りの奴にまで迷惑をかけるぞ？
少し、休ませた方が良いような気もするな・・・。












「う～ん・・・過労、睡眠不足、栄養不良、自律神経も失調していますし顔も悪いですね・・・要するに心身ともにボロボロです。今や移動するストレスと化してるといっていいですね」

ここは保健室。
現在、石橋は秋子さんに診察を受けている。
石橋のあまりのひどい有様に、校長が見るに見かねて保健室へ連れて来たのだ。

「とにかく職場を離れて静養するのが一番ですね。久しぶりに下宿に戻って夕方まで仮眠を取るのが良いですよ」

そう言うと秋子さんは何処からとも無く大きな薬瓶を取り出した。

「神経が高ぶって眠れない時はこれを・・・トランキライザーです」

そして、その薬瓶を石橋に渡す。
心なしか瓶の中の液体がオレンジ色にも見えない事もないが・・・・気のせいだろう。

「いやぁ、ありがとうございます秋子先生」

そう言って、秋子さんに頭を下げる校長。
・・・いつから、秋子さんは先生になったのだろうか？

姿勢を元に戻した校長は、先ほどから秋子さんの前で座ったまま一言も発さない石橋に顔を近づける。

「しっかり頼みますよ先生。あと一日、明日は学園祭初日ですからな？」

そう言った校長の眼鏡がキランと光った・・・・・。