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過去の遺作置き場
2017年09月26日 (Tue)
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2002年09月27日 (Fri)
8月2日 その4



「うぅ、ひっく・・・くすんんくすん・・・」

小さな少女が、嗚咽を漏らして泣いている。
よく見ると、その少女の体はあやめさんのようにどことなく透けていて・・・一目で幽霊だと分かった。
私は少し躊躇したけれど、その少女の幽霊に話しかけてみる事にした。
だって、このまま突っ立っててもどうにもならないしね・・・。

「ゆ、祐子さん?」

私にしがみつく栞が不安そうな声を上げる。

「大丈夫よ、栞・・・」

私はそう言って栞の頭を撫でながら、幽霊の少女に歩み寄った。

「ねぇ、どうしたの?」
「くすん・・・え?」

私が声をかけると、その少女の幽霊は驚いたようにこちらを振り向いた。

「お姉ちゃん達、私の姿が見えるの・・・?」
「えぇ、見えるわよ」
「はい、見えます・・・」
「そうなんだ・・・驚いた」

私と栞を交互に見ながらそう言う少女。
この子はそれほど怖いって感じはしないわね・・・。


「ところで・・・どうして、泣いてたの?」
「それは・・・」

途端に幽霊の少女は顔を曇らせた。
そして、それ以降黙ってしまう。
何か言いにくい事なの・・・?

「・・・ね、話してみて。もしかしたら何か力になれるかも知れないし」
「うん・・・ありがと、お姉ちゃん」

そう言って、少女は私に微笑んだ。


「私ね・・・ここに閉じ込められてるの・・・」

社の外の縁に腰掛け、栞と二人で少女の話を聞く私達。
相変わらず、さっきから感じてる視線が気になるけど・・・。
今は、少女の話に集中しましょう。

「閉じ込められてるって、このお社に?」
「うぅん。この社そのものじゃなくて、この辺り一体の空間に閉じ込められてるの」
「空間に・・・?」

それじゃあ・・・私達が元の場所に帰れずに、何度もこの場所に戻ってしまうのもそのせい・・・?
やっかいな所に迷い込んじゃったわね。

「それにしても、どうしてこんな所に・・・」
「・・・お姉ちゃん、さっきから視線感じてるでしょ?」
「え? えぇ・・・」
「その視線の主がね、私を閉じ込めてるの。私の・・・お父さんなんだけどね・・・」
「「えぇっ?!」」

その言葉を聞いて、私と栞は驚いた。
まさかさっきから感じてるこの視線が・・・彼女のお父さんだなんて・・・。

「えぅ~・・・で、でもどうしてそんな事に?」

栞がそう尋ねると、少女は少し悲しそうな顔をした。
そして、少し間を開けてから口を開く。

「お父さんね・・・友達に裏切られてお母さんを取られちゃったの。そのショックでお父さんおかしくなって・・・私をここへ連れてきて、心中したの・・・」

淡々と語る少女の言葉を、私と栞は黙って聞いていた。
それにしても・・・結構ヘビィな話ね・・・。
横で栞も少し青ざめてるし。
でも、ここまで聞いたら最後まで聞かないと・・・。

「その後、幽霊になったんだけど・・・私をお母さんみたいに失いたくないお父さんは、私をこの空間に閉じ込めて・・・」

そこまで言って、少女は目を伏せた。
多分泣いてるのね・・・。

「私、お父さんの事は嫌いじゃないよ・・・でもこんなのはやだよ・・・」

そう言って嗚咽する少女・・・。
・・・見ていて胸が痛い。
いくら父親とは言え許せない。
何とかしてあげたいわね・・・。
栞の方を見ると、どうやら栞も同じ事を考えてるようね。
となれば・・・。

「ねぇ、この空間から抜け出す事は出来ないの?」
「一応、抜け出す事は出来るんだけど・・・すぐにお父さんに捕まっちゃうの」
「そっか・・・」

一応、逃げる事は出来るのね。

「それじゃあ、駄目元でも逃げてみましょう。もしかしたら何とか出来るかも知れないし」
「本当・・・?」
「う~ん・・・自信はないんだけどね」

ペロっと舌を出して答える。
本当は自信どころか、逃げられる当てさえないんだけど・・・わざわざ不安にさせる必要はないわ。

「とにかく、いつまでもここに居てもしょうがないからね。栞、走れる?」
「はい、いつでも大丈夫です!」

手を上げて元気良く返事をする栞。
うんうん、頼もしい返事ね。

「それじゃ、行くわよ」

私は栞と少女を連れて、この閉鎖された空間から出るべく走り出した。




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