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過去の遺作置き場
2017年12月13日 (Wed)
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2002年09月28日 (Sat)
8月2日 その5



神社を離れて走り出してから5分・・・。
さっきは神社の周りでしか感じなかったあの視線が、今度はずっとついてきてる。
多分、この女の子を連れたからね・・・。

「お姉ちゃん、あそこに大きな木が2本見えるでしょ?」

そう言われて前を見ると、確かに周りの木とは少し違う2本の木が立っている。

「あの木の間が、この空間の出口になってるの・・・」

なるほど、通りで歩いてても出られないわけだわ。
だって、その2本の木は道から完全に外れた所にあるんだもの。
普通に歩いてたら、まず通らないものね。

「栞、もうすぐだけど大丈夫?」
「は、はい・・・な、何とか」

息を切らしながらそう答える栞。
よく考えたらさっきからずっと走りっぱなし。
普段、朝から鍛えられてる私と違って栞にはきついでしょうね・・・。
でも止まるわけにはいかない。
酷だけど、栞にはもうちょっと頑張ってもらわないと。



出口であるその2本の木に近づくにつれ、後ろから感じる威圧感のようなものが増してくる。
まるで、それだけで押し潰されてしまいそうな程に。
・・・何て執念なのよ。
でも、もう出口はすぐそこまで来てる・・・!

「お姉ちゃん!そのまま突き進んで!!」
「分かった!」

私達はスピードを緩めずに、そのまま2本の木の間へ・・・!


ドカッ!


「うあっ!」
「きゃっ!」
「えっ?!」

何かにぶつかるような感覚を受け、跳ね飛ばされる。
見れば私達は、2本の木の前で倒れていた。

「一体、何が・・・?」

私は立ち上がって、その2本の木の間へ手を持っていく。
すると、そこには何かの壁のようなものがあって、それ以上進む事が出来なかった。

「そ、そんな・・・前にはこんなの無かったのに・・・」

女の子が悲痛の声を上げる。
これは・・・脱出不可能って事?!

「えぅ! ゆ、祐子さん!」
「どうしたの栞?・・・な、何?」

後ろを振り返ると、そこには大きな人の顔が居た。
他の体の部分は無くて、本当に顔だけ・・・。
そしてその顔には怒りの表情が見て取れた。

「お、お父さん・・・」
「え?」

女の子が擦れるような声で呟く。
それじゃあ、これがこの空間に女の子を閉じ込めてるあの父親?

『・・・私の元を離れる事は許さない・・・お前は、私だけのものだ・・・』

頭の中に直接聞こえてくるような声が響く。

「う・・・うあ・・・」

その声が聞こえた瞬間、栞はその場にへたり込んでしまった。
かく言う私も、さっきから恐怖で体が動かない。
今まで、あやめさんとかの例があるから幽霊なんて大した事ないって思ってたけど・・・こいつは違う。

怖い・・・。

心の底から恐怖がこみ上げる。

「お父さん止めて!私は戻るから、だからお姉ちゃん達だけは帰してあげてよ!!」
『私からお前を奪おうとした者を、そのまま逃がすわけには行かない・・・』
「そんな!お父さん?!」

そんな女の子の声を無視して、その顔だけの幽霊は私達に迫ってきた。
駄目・・・逃げないと・・・。
でも頭では分かってるのに、体ががくがく震えて動けない。
誰か助けて・・・っ!


パァ・・・ッ。


「え?!」
『ぬぅおぉ!』

もう駄目だと思った瞬間、後ろの2本の木の間から光が溢れた。
目を凝らすと、その光の奥に一人の女の子の姿が・・・。

「南・・・じゃなくて、あやめさん?!」

その光の中から現れたのは、間違いなく南に乗り移ったあやめさんだった。
あやめさんは、目を閉じて手を胸の前に合わせ何かを呟いている。

「相沢! 今のうちだ、早くこっちへ!!」
「北川君!?」

光の中から突然現れた北川君が、私達の方へ手を伸ばしている。
私は横で腰を抜かしている栞を抱き上げると、北川君の居る方へと向かった。
今度はさっきのようにはじき返される事もなく、すんなりと通れた。

「君も早くこっちへ!」
「え、あ、うん」

まだ一人残っていた女の子を、北川君が呼び寄せた。
これで、あの顔だけの霊以外はみんなあの空間を抜け出せた。
私は、栞を近くに下ろすと先程まで居た場所の方を振り向く。
顔だけの幽霊がこちらへ来ようとしているのを、あやめさんが何か結界のようなもので防いでいた。

・・・あやめさんって凄かったのね。

『うおおおぉぉぉぉ・・・何だこの光は・・・何故私の力が封じられる・・・』
「あなたはこちらに来てはいけない存在なのです。もうそこから出る事は出来ません」

あやめさんが淡々と呟く。
見れば、空間を繋ぐ出口が少しずつ閉じていっていた。

『嫌だ・・・私を一人にしないでくれ・・・娘よぉぉぉぉ・・・』
「お父さん・・・ごめん」
『あああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・』

最後の叫び声と共に、空間は閉じた。

「こちらから空間を閉じましたから・・・もう開く事もありませんし、向こうから出てくる事も出来ないはずです・・・」

そう言ってあやめさんがふらりと倒れる。

「あやめさん!しっかり!!」

北川君が素早く駆け寄って、あやめさんを抱き上げた。

「申し訳ありません潤様・・・ちょっと疲れて・・・しばらく眠らせていただいても宜しいですか・・・?」
「あぁ、ゆっくり休んで・・・」

北川君がそう言うと、あやめさんは微笑んでそのまま目を閉じた。


「ふぅ・・・」

私は一つ溜息を吐く。
ふと東の空を見上げると、うっすらと明るくなり始めていた。
結局、一晩中迷ってた事になるのね・・・。

「お姉ちゃん・・・」
「え、あなた・・・!?」

呼ばれて振り向いた時、その少女の姿は大分薄れ始めていた。

「もうすぐ朝だから・・・そうしたら、お姉ちゃんともお別れだね」

悲しそうな目をして私を見つめる女の子。
その間にも、どんどんその体は薄くなっていく。

「私、これでやっと天国へ行けるよ。ありがとうお姉ちゃん」
「別に私は何も・・・」

言い掛けた私の言葉を首を振って止める。

「お姉ちゃんが私を連れ出そうとしてくれなかったら、私はずっとあの場所に閉じ込められたままだったと思うから・・・だからお姉ちゃんのおかげだよ」

そう言って女の子は微笑んだ。

「また、会えるのかしらね?」
「・・・生まれ変わってからなら会えると思うよ。でも、その時にはお互いに分からないと思うけど」
「そっか、残念」

私はそう呟いて目を伏せた。

女の子の体は、もうほとんど見えなくなっている。
もう・・・消える時間・・・。

「それじゃあ、お姉ちゃん・・・・私、もう行くから・・・」
「あ、待って! 最後に名前だけ聞かせて?」
「あ、そうだね・・・私、『みこ』って言うの」
「みこちゃん・・・また会おうね」
「うん、ありがとうお姉ちゃん・・・」

そう呟いて・・・みこちゃんの姿は見えなくなった。


”・・・本当にありがとう・・・”


最後にそんな声が頭の中に響いた。
・・・さよなら、みこちゃん・・・。







「さ、それじゃ別荘に帰りましょうか。北川君、他の皆は?」
「あぁ、多分皆別荘で寝てるんじゃないかな? 一晩中寝ずにお前らを探してたわけだし」
「そっか。後でお礼言わないとね・・・」
「えぅ~、祐子さん待ってください~」
「栞? どうしたのよ、早くついてきたら?」
「・・・腰抜けてて立てないです・・・」
「はぁ、ホントにもう・・・しょうがないわね。じゃあ、おぶってってあげるわよ」
「えへへ・・・祐子さん、ありがとうございます~」
「さ、それじゃ帰りましょ。皆の待つ別荘に」
「はい!」




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